FX取引における確定申告では、海外FXを利用しますと国内の申告とはまた大きく違うものになります。
しかも金融当局や税務当局から、決して好意的に扱われておらず、とかく利益に対しては大きな税金を支払わざるをえない状況となっています。
今回は、海外FXの代表的業者であるXMの確定申告を例にとりながら、その効果的な方法と注意点についてご紹介していていきます。
もくじ
■海外FX取引について税務署は大きな関心を寄せている
FX取引きに関する確定申告はもとより、海外FX業者を利用した取引に伴う所得全般については、本邦個人投資家の海外投資行動の一環として国内の税務当局は並々ならぬ関心を持っています。
とくに海外からの送金額が大きくなりますと、金融庁の厳しい行政指導の下で邦銀が税務当局に詳細のレポートを月次で提供することになりますから、こちらの情報を通してひっかかることになり、慎重な対応が必要になることは言うまでもありません。
しかも海外FX業者を使った取引は、国内業者を利用した取引よりも潜在的に断然疑わしい存在として見られていますので、確定申告にあたっては提出した後も、どのような質問や指摘にも明確に答えられるように準備をしておく必要があります。
■XMの所得区分は雑所得の扱い
XMを利用して得られた利益というものは、雑所得と呼ばれる費目にカウントされます。
これは国内FXと同様です。
■XMの確定申告が関係ないのは雑所得20万円以下の場合のみ
XMを利用して申告の必要がない給与所得者は、雑所得として年間の売上が20万円以下しかなかった場合のみです。
ただし、XMで20万円以下の利益しかなくても、雑所得トータルとして20万円以上売上があると話は別になります。
FXが3万円の利益でも、アフィリエイトが40万円あるとか、原稿料や講演料などの合算でそれ以上となれば申告が必要になります。
また会社に勤務しておらず給与所得のない人は、XMで得た収入から経費を差し引いた所得が年間38万円を超えると確定申告の対象となります。
■XMのFX取引は国内FXの申告とは全く別ものと考えるべき
国内業者を利用した取引にはいくつものインセンティブが申告時に与えられていますが、XMを使った場合こうしたインセンティブというものは一切適用されません。
上の表は国内FXと海外FXを利用した時の違いですが、ご覧のようになんのインセンティブもなく、総合課税として他の所得と合算で課税の対象になることはまず最初に認識しておくべきです。
■XMの取引きで経費計上できる費用
専業トレーダーのようにトレードをして、ネットでFX売買を行っている場合には取り引きデバイスの購入費用は経費になります。
スマホが経費に入るかどうかは微妙ですが、全体利用のうちどの位スマホで取引しているかが立証されれば通信コストは経費計上できるとみていいでしょう。
ただ常識的にWifiを利用するようにするといった配慮は必要になります。
タブレットPCや通常のPCなど10万円未満のものは、確定申告時に一括経費処理してもほとんど認められます。
また液晶モニターを増設しても認められます。
連日つけっぱなしにするこうしたデバイスは、耐久テストをしているようなもので2~3年で壊れるものもありますので、遠慮なく経費計上してみるべきです。
また、10万円を超えるものについては4年で減価償却することになりますので、基本は価格の4分の1を4年にわたって償却する方法が適切です。
厳密にいえば、月割りにして7月に購入したなら、初年度は48か月分割の6か月分といった計上の仕方をします。
パソコンのFXへの利用割合はそれほどうるさく言われるわけではありませんから、FX用に購入したなら堂々とそれを主張すればいいだけの話です。
また、インターネットブロードバンドや光回線なども経費として認められます。
それ以外書籍の購入やセミナーへの参加交通費なども参入可能ですが、全体から見れば微々たるものですので、大勢の影響は与えません。
ただXMの確定申告では、とにかく税制上で経費計上できそうなものは、遠慮せずにどんどん提出していくことがお勧めとなります。
税金を払わない姿勢に対しては税務署は強面の対応になりますが、リーズナブルな経費処理は事務所によって多少の違いはあるものの、これまでの経験から言えば問題なく認められています。
ここまでのコストを年間の経費計上しても、莫大な金額にはならないということだけはよく理解しておくべきです。
■NDD方式の外だし取引手数料が経費として認められる
国内ではセントラル短資FXのウルトラFXのように、NDD方式で取引手数料を外出しにして売買しているものの場合には、この取引手数料を経費処理ができます。
同じように、XMのゼロスプレッド口座(XM ZERO口座)における取引手数料も経費として認めらます。
通常のスプレッドには、実は取引手数料がマークアップされているのですが、このスプレッド自体はどうやっても経費としては認められません。
ただし、XMはレバレッジ888倍を使うことに大きなメリットがあるわけですから、この手数料の経費化のためだけにXMZERO口座を利用するのはお勧めできません。
海外FXについては、複数の業者を使っても当然のことながらまったく損益通算などはできない状況ですから、ほかの海外FX業者でマイナスの成績があってもなんら申告上で対応はできません。
逆にXM以外にも複数の海外業者で利益がでている場合には、それも含めた申告が必要になります。
■具体的にXMの取引で申告を行う方法と手順
それでは具体的なXM取引の確定申告について、ご説明していくことにします。
1.必要書類をそろえる
まず、確定申告に利用しなくてはならない必要書類を集めることになります。
XMのFX取引は総合課税となりますので、次のような書類を取得することが必要となります。
給与所得者の場合には源泉徴収票
給与所得者は、源泉徴収票をまずそろえる必要があります。
通常の企業は年末に配布されていますが、見当たらなければ再発行してもらいましょう。
2.XMの取引履歴をダウンロードする
申告にあたっては、その要となるXMの取引履歴を取り寄せる必要があります。
XMのホームページのマイページにログインして、年間の収支を確認して書類を手に入れることが必須です。
こうした書類はネット上から簡単に確認できるのは非常に便利です。
だいたい自分が確定申告しなくてはならない金額を稼いでいるかどうかは、わざわざサイトの履歴を確認しなくてもわかりますが、たまにしか取引しない給与所得者の方は年間で20万円を超えたかどうかを、まずチェックします。
また実際の年間取引の履歴を確保するためには、利用してきたMT4なりMT5から利益を取得することになります。
具体的な方法は以下のとおりです。
MT4を開きますと、一番下に口座履歴というタブがありますのでまずこれをクリックします。
さらにターミナル上の口座履歴を右クリックしますと、期間のカスタム設定というものが選択できますのでこれをクリックします。
ここで昨年1年間の期間を設定します。
さらに右クリックをしてレポートの保存をクリックしますと、必要なレポートがダウンロードされますので、これで海外FX分の材料は揃うことになります。
これで年間の収支を確認して、Closed Trade P/Lが当該年度の確定損益ということになります。
ここがマイナスの場合には、確定申告の必要はなくなります。
※スマホでは書類閲覧はできるがダウンロードは不可能
さて、最近では高速のモバイルブロードバンド環境が整備され、スマートフォン一台のみでFX取引をするケースも増えています。
しかし残念ながら、このデータはスマホでは設定して閲覧はできますが、ダウンロード等保存はできませんので、確定申告のためには必ずパソコンを確保してMT4をインストールし、データダウンロードができるようにしておく必要があります。
WEB版のトレードツールでもデータは引き出せませんので、ネットカフェなどを利用することも無理な状況です。
3.入出金(海外送金)の取引記録を必ず残す
ひとつXMの確定申告で注意しておきたいのは、金銭の出納帳、つまりXMへの入出金の推移を明確にしておくことです。
XMからの年間取引履歴が利益の証として機能しないというわけではありませんが、正直なところかなり疑いの目をもって見られていることは確かです。
たとえば年間500万円の利益しかなくても、100万円入金しては50万円利益がでたら証拠金を含めて150万円出金するといったやり方をしていますと、海外からの送金分は見かけ上1500万円以上になることも十分にありうるのです。
国内の業者の場合には入出金というのは問題になりませんが、海外のFX口座の場合にはXMから自分の国内銀行口座に送金されてきた額が一回100万円を超えますと、すべて着金した金融機関からもよりの管轄の税務署に月次でレポートが行くようになっていますので、あとになって出金額について詳細説明を求められることがあります。
とくに確定申告提出後に、その内容との不整合を問われることがありますので注意してください。
別に入れて出しただけで利益がなくても海外送金になるわけですから、かなり疑いの目をもって見られてることにもなりかねません。
もちろんやましいことがなければ毅然と対応すればいいだけの話ですが、XMでのクレジットカードと海外送金を利用した資金と利益のやりとりを行う場合には、専用のカードと専用の銀行口座を用意して、時系列的に付け合わせればなんの問題もないように準備することが必要です。
通常はここまで求められることはありませんが、後日お伺いということで税収をあげなくてはならない税務所の職員からお尋ねがくることがありますので、いつでも対応できるようにしっかり準備をしておくことが重要です。
4.XMだけの確定申告より、すべての収入に対する申告が必要
給与所得者であって通常確定申告の必要がない人は、XMを利用した確定申告ではその部分の申告書を作り、源泉徴収で課税されているものと合算して修正の課税所得を確定させて追加分の税金を払えばいいわけですから、XMの部分の申告を作成すれば事足りることになります。
しかし個人事業主であったり、給与所得者でも不動産賃貸事業を行っていたりする方は、結局のところ残りの部分の確定申告をすべて完結させなければ申告を済ませたことにはなりません。
例年すべての申告作業をご自身でやられている方は、それに海外FXの利益部分を追記して完結させることになりますが、税理士さんなどにお願いして申告している場合には、海外FX部分だけをまとめてそれを税理士さんにお送りして面倒を見てもらうというのもひとつの方法になります。
補足「金融商品との損益通算はNG」、「不動産賃貸所得等との通算はOK」
XMの確定申告は総合課税ということで、ここからはFXとは離れた話になりますが、国内FX業者利用で一定の先物デリバティブ商品との損益通算などがまったく認められていないXM確定申告は、逆に不動産賃貸事業などでの損失との損益通算は可能になります。
つまりローンなどの借金をして不動産賃貸事業をしたものの、ローン金利分や減価償却などのコストを引いて赤字になった不動産賃貸の場合には給与所得や雑所得と損益通算が可能になるのです。
たとえばざっくりとした話で、不動産賃貸で年間150万赤字がでて、FXの利益で180万ならば差し引き30万が損益通算所得になるということがあり得るのです。
もちろんFXの確定申告のために赤字の不動産賃貸事業をやるのは本末転倒ではありますが、こうした使い道があるということは覚えておいて損はありません。
■XMを利用した節税
ひとことでいいますと、XMを利用した海外FX取引の確定申告には画期的な節税の方法などは一切存在していません。
むしろありのままの状況を正確に申告して、それが認められるように努力することがきわめて重要になるのです。
海外FXという本邦の金融当局、税務当局からひどく嫌われているルートを使った利益獲得で、余分な疑いをかけられたり説明に時間をとられたりすることがないように、公明正大にその内容を開示して申告する姿勢が大事になるというわけです。
税務署対策のひとつ方法としてはあえてネットなどでの確定申告提出を利用せずに、いちいち税務署に相談に行って認められたところまでは担当税務員の印鑑を押してもらい悉く言質をとって、後々もめないように対処するといったひどく時間のかかる方法をとることも考えられます。
一度認められれば次年度以降は殆どケチをつけられないのが、この手の確定申告の定石になっています。
XMのような海外FX取引で大きな利益が出たときには、そうやって税務員に有無を言わせないアプローチをとるというのもお勧めです。
いずれにしてもXMで多額の利益がでますと、税務署の対応は非常に気分の悪いものになりますので、覚悟を決めて完璧に対応する方法を模索しつづけることが必要です。
最近では仮想通貨の確定申告も始まっていますので、こうしたややこしい申告にやる気満々の税務員も増えている状況です。
海外FXの確定申告も理路整然と説明していけば、疑いの余地はなくなりますので、大きな利益が出た翌年は覚悟して税務署の窓口を利用した申告活動を行うのは面倒ではありますが、かなり効果的な方法といえます。
また年間の半分をすぎたあたりで累積的な利益がどの位になるのか一回計算してみて、みずからの給与所得などほかの費目での収入との合算でどの位になるのかをあらかじめ計算しておくことも重要です。
高額な税金を支払いたくないということであれば、XMでの利益獲得額を制限して国内FXに資金を移して売買するといったハイブリッドな利用法も考えられます。
もちろんFXの利益というのは計画的に稼ごうとしてそれが実現できるような代物ではありませんが、課税対象になる所得の45%も税金を払うとなれば、
あとで多額の納税義務が生じますから、2割を残して適当に使ってしまうというラフな利益利用もできなくなります。
しっかり事前に収入の目途を把握したうえで取引するというのも重要です。
税率がアップするぎりぎりのレベルにいる場合には、それ以上稼いでも手元に残るものは殆ど変わらないということも十分にあり得ますので、国税庁が提供しているこの表を年間の取引上定期的にチェックしてみることがお勧めです。
出典 国税庁 所得税速算表
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2260.htm
■まとめ
XMの大きなメリットは少ない証拠金で大きな利益を上げられることに加え、国内業者には存在しないボーナスをクレジットにして投入証拠金額以上に大きな取引ができることにあります。
ひと昔前ならば国内でも300倍、400倍のレバレッジを活かして年間に莫大な利益を確保できた個人投資家が多く存在しましたが、今や最大25倍のレバレッジではそうした夢のような億りびとは簡単に誕生しなくなっています。
それだけに、XMのようなハイレバレッジを利用した証拠金の運用は貴重なものとなります。
確定申告にあたっては、こうした海外業者FXによる獲得利益はまったく優遇されることはありませんから、同じFX取引でもその扱われ方はかなりひどい話しですが、そうしたマイナスの側面を加味しても利用価値は十分にあるといえます。
節税的な抜け道はまったく存在しませんが、正確な内容を申告して認められることこそが重要な方法となることを肝に銘じて対応していきたいものです。
【XM公式サイトの各ページ】
この記事の「XM利用者の効率的な確定申告法」について
もう少し教えて頂けたらと思いメール致しました。
XM Zero口座の取引手数料 (Commission)が経費とする場合についてです。
私の2018年度のXM Zero口座の収支は下記の通りになりました。
(初めて、利益が出ました。)
1.取引手数料 (Commission) -500万円
2.スワップ (R/O Swap) -20万円
3.損益 (Trade P/L) +600万円
4.確定損益 (Closed Trade P/L) +80万円
(取引履歴収支となる年間取引報告書(年間損益計算書)は、MT4のレポート機能を利用して取得しました。
PC版 ターミナルウインドウ→口座履歴→右クリック、期間のカスタム設定→履歴照会)
確定申告の際、確定損益 (Closed Trade P/L)から、
経費として、XM Zero口座の取引手数料 (Commission)を
差し引いて、良いのでしょうか?
この答えが知りたいです。
確定申告の際は、
④-① = -420万円でしょうか?
それとも
5. = +80万円でしょうか?
お忙しいところ恐縮ですが、ご回答頂けたら、幸いです。
コメントありがとうございます。
ご存知のように手数料が内蔵されているスプレッドは一切コストとして計上することはできませんが、
手数料を外だしにした口座については、手数料部分をコストとして計上可能です。
国内ではセントラル短資FXにウルトラFXというECN方式の取引口座がありましたが、
2018年4月で終了してしまったので今は見渡しても同じ形態の口座は存在しませんが、
過去に取引手数料をきっちり経費計上できているので心配ありません。
ただ、ひとつ利益が600万で手数料が500万というのは、
かなりバランスの悪い数字ですが、スキャルピング主体かなにかでやられた結果でしょうか?
通常はそこまで利益を手数料が食わないはずなのですが・・
きっと税務署に提出するとその点を同じように指摘されると思います。