ご存知のとおり、2019年1月3日、国内では三が日の3日目のお休みで、関東圏では多くの方が箱根駅伝の復路のスタートがそろそろ始まる、かなりのんびりした時間帯に、いきなりドル円が瞬間的大暴落、いわゆるフラッシュクラッシュを示現することとなりました。
幸か不幸か、私は実際にチャートの前にいて、相場が瞬時に暴落したのを目の当たりにする機会に恵まれました。
一瞬何が起きたのかはまったく判らず、かろうじて下落した底値近辺で、少量を打診買いしてみたところ、あっけなく2円近くすぐに戻るというとんでもない相場が展開することとなりました。
私が実際にチャートを見ていたのは、XMと楽天証券のドル円でしたが、あきらかに楽天のほうが下方向まで下落しており、業者によって相当提示された価格が異なっていたであろうことが瞬間的にわかるものとなりました。
そこで今回は、
XMがどのような動きになり、国内の店頭FX業者とどう異なるものになったのか、
について調べてみましたのでご覧いただきたいと思います。
もくじ
■XMはNDD・STP方式、国内店頭FX業者はDD方式
XMは他の項目でもご紹介しているとおり、NDD方式と呼ばれる顧客からのオーダーを、すべて外部のカバー先に転送発注してそこに業者マージンを乗せる形をとっています。
さすがに同一通貨ペアの中での顧客間の反対売買は相殺するようですが、それ以外はすべて外部に発注していますから、価格が消えずに提示され続けるということは、カバー先からの価格提示が継続していたことを物語っています。
同社にはオークション形式で電子取引を行うECN方式のゼロ口座も用意されていますが、今回は国内でももっとも利用者の多いいわゆるマイクロ口座のNDD/STP方式を調査対象としています。
一方、国内の店頭FX業者は顧客からの発注をすべて外部に投げることはせずに、社内にディーリングデスクを置いて適宜状況に応じて顧客のオーダーと利益相反するような売買を行っています。
これをディーリングデスク・(DD方式)と呼ぶわけです。
DD方式では次の4つの異なるオペレーションを行っています。
1)顧客間の同一通貨ペアに対する相殺行為
2)顧客のオーダーと反対の売買を行う行為
3)顧客のオーダーを外部のカバー先に流してマージンを取る行為
4)顧客のオーダーを外部には発注せず反対売買もしないで呑む行為
以上の4つですが、どのようなときに、この4つのオペレーションが切り分けられているのかは、外部には一切公表されていません。
ただ一つ言えるのは、顧客が証拠金を大きく減らすタイミングは業者にとっては、それが丸ごと利益になるタイミングである可能性がきわめて高いということです。
■XMでは一時的な値飛びはあったが値が消えることはなかった
具体的に、XMにおける日本時間の1月3日、朝7時半あたりの、相場の値動きをトラッキングされたデータから見ていくことにします。
まずドル円1分足のチャートですが、XMで表示されている時間帯は東京タイムよりも7時間遅くなっていますので、1月3日の深夜0時半あたりからが、この下落の対象となる時間であることがわかります。
日本時間の朝7時にNYタイムが終了した直後に、アップルの業績予想訂正の報道がでたことから、ドル円は108円台へと落ち込む動きになり、その後この水準でもみ合いを行っていました。
そこに7時半過ぎから、急激に下げの動きがではじめて、36分から37分にかけて一気に下落する動きとなっています。
長い足のチャートでは、単純に下髭が出る形になっていましたが、1分足で見ますと、37分の1分間は価格が飛んで下落する場面があり、その後は値が出ないということもなく淡々と推移する形となりました。
残念なのは、スプレッドがどの位広がったかは、このデータではわからないのですが、少なくとも下落してからはすぐに、スプレッドもワイドからこの時間帯に出るぐらいのものに簡単に戻ったことは確認がとれています。
実際の1分ごとの価格推移は、以下の通りになります。
このデータによれば、もっとも底値となったのが、東京タイム7時39分の104.642円であったことがわかります。
■短時間でスプレッドも価格も、元に戻る動きに
XMTradingは、本拠地をセーシェルに置いていますが、実際にサーバーが設置されてオペレーションを行っているのはロンドンですから、カバー先の金融機関は詳細公表されていませんが、米系、欧州系の金融機関30社以上を設定しているものと思われます。
当然国内の店頭業者は、本邦のインターバンクをカバー先としていることが多くなりますが、こうしたカバー先の違いも相場に結構異なる影響を与えているものと思われます。
国内業者は、実に取引ボリュームの8割がドル円ですから、ドル円のカバー価格というものが非常に経営にも大きな影響を与えるわけです。
XMとその先にいるカバー先銀行にとっては、ドル円だけがクリティカルな通貨ペアというわけではありませんから、もちろんこうした暴落時には、価格を提示してこないカバー先もあり、一時的にはスプレッドが開いたこととなりましたが、その後急激に回復したことにより、結果的に値が出ない時間帯はまったく存在せず、利用者にとっては非常に安心なサービスを提供されたことが改めて理解できます。
■ゼロカットシステムが稼働
XMには、海外FXではもはや必須の要件となっている「ゼロカットシステム」が実装されており、証拠金以上に損失がでても一切追証を求められないという、きわめて安全な装置が働いていたことから、当然今回も追証が発生するような騒ぎにはなっていません。
過去2015年の1月15日に、突然発生したスイス中銀による無期限対ユーロ介入の中止宣言直後に発生したスイスフラン暴騰と、ユーロやドルの暴落騒ぎではカバー先の金融機関が一切レートを出さなくなったことから、XMでも一旦一部通貨ペアの取引がストップするといった最悪の事態が起こり、その後はレバレッジも50倍に制限されるといった特別な状況が展開することとなりました。
しかし今回のドル円の下落では、まったくこうした緊急事態は発生せず、XMからもなんの告知もないまま、淡々ともとの相場に戻ることとなった次第です。
そのくらいXMにとっては、この暴落の影響は少なかったことがわかります。
■DD方式の国内店頭FX業者は実に不可解な動きを連発
一方、DD方式をとっている国内の店頭FX業者のほうは、業者によって相当不可解な動きが生じることとなり、あらためてその業務フローの透明性の低さというものを露見させる形になってしまいました。
実際に、国内業者で発生した状況は、3つのパターンに分かれました。
1.スプレッドが広がらず、値飛びもせずにどんどん下げた業者
以下の2社が、顕著な例として挙げられます。
SBI FXトレードは、暴落直後の1分間のみ値を消しましたが、その後は一貫して通常の原則固定スプレッドを維持しています。
またFXプライムbyGMOは、暴落直後から一切の値消しや値飛びはなく、2.6銭の平常時の原則固定スプレッドを維持した形となりましたが、103.511円Bidまで下押しし店頭FX業界では最安値近辺まで値を下げています。
この2社は非常に整然と値を下げており、ワイドスプレッドにもならなかったことから、強制ロスカットもしっかり履行されたはずで、利用者にとっては非常に安全な業者となっていたことがわかります。
但し、カバー先からの価格がでないことには、最適なスプレッドが本来は出せないのがFX業者のはずなのに、まったくスプレッドも広がらないというのは、こうした暴落時に外部のカバー先に一切顧客からのオーダーを投げずに、呑みを行っているのではないかという、全く別の疑惑が湧くところもあり、非常に不思議な業者といえます。
ちなみにSBI FXトレードは、昨年8月のトルコリラ円暴落時も、一切スプレッドが広がらなかった業者として有名であり、人工的に作り出している最狭スプレッドを一体どのようにして維持しているのか、かなり疑問の残る業者といえます。
2.暴落の瞬間ワイドスプレッドの装置が機動した業者
国内店頭FX業者として多かった対応が、暴落の瞬間ワイドスプレッドの装置が機動したケースです。
ワイドスプレッドとは・・・
FXの取引において売りと買いのスプレッドが通常の幅から急激に広がってしまうことをワイドスプレッドと呼んでいます。
すべての顧客からの売買オーダーを、外部のカバー先に出して売買するNDD方式の場合は、カバー先が出してくる価格に暴落や経済指標の発表などで大きなばらつきが出た場合には、必然的に発生するものがこのワイドスプレッドと呼ばれる状況ですが、一定の時間を経て多くのプライシングがではじめればもとに戻ることとなります。
一方国内で、社内にディーリングデスクを設置しているいわゆるDD方式の店頭FX業者の場合も、対外的にはカバー先がプライシングを出さなくなるために、同様のワイドスプレッドが示現すると説明していますが、業者によっては暴落などで価格がでなくなった途端に、自動的にワイドスプレッドが示現するような仕組みを持っているところもそれなりに存在するようで、暴落が起きなくてもたまにこうした装置が機動してしまいとんでもないワイドスプレッドを示現させてしまうこともあります。
ワイドスプレッドになると、もっとも困るのはあらかじめ設定しておいた指値、逆指値、強制ロスカットが履行されなくなることで、利益がでる分には問題はありませんが、損失を回避しようとした場合には想定をはるかに超える損害になってしまうことがあるため、こうした値幅を出す業者を利用するのには相当な注意が必要となります。
ここでは現状で確認できた6社を挙げていますが、実際にはこれ以上に様々な業者がワイドスプレッドを示現させたものと思われます。
カバー先が値段を出して来なくなるわけですから、一定のワイドスプレッドが生じるのは致し方ないものと思われます。
しかし、DD方式の国内店頭FX業者の場合、日常的に常にカバー先にオーダーを出しているとも思えず、むしろ暴落時に自社判断で、まず自分達のリスク管理のために、自動的にワイドスプレッドの装置を働かせているとしか思えない動きをしたところが、かなりある点が気になります。
業者側の説明はもっともな内容ですが、実際ディーリングデスクで何をおこなっていたのかは全く不明の状況です。
3.カバー先からの価格不提示を理由に、価格を出さなくなった業者
カバー先からの価格不提示を理由に、価格を出さなくなった業者も多数存在します。
そもそも価格を参考にしているカバー先が、一切プライスを出さなくなったのだから、同様に顧客にプライスを出せないという状況がこれです。
このように、国内店頭FX業者は大きく分けて、3つの典型的な動きを見せることになりました。
まずXMが、外部のカバー先だけを頼りにして売買価格を提示しているにも関わらず、かなり早い段階でもとに戻る動きを見せたのに対し、国内業者はまったく通常通りの取引ができるところもあれば、1円以上のワイドスプレッドが出るところもありました。
しかもプライスがほとんど出ない状態を、30分近く行ったところもあり、相当なばらつきを感じました。
しかも利用顧客に、甚大な被害を及ぼす恐れのある動きを示現させている点が非常に気になります。
カバー先が各社それぞれ違うわけですから、値の出方にも違いがあるというのは理解できますが、これだけの荒れた相場でも原則固定のスプレッドを粛々と提示しつづけ、一切売買に支障をきたさなかった業者もあるわけです。
結果的に、同じ証拠金を保有して同条件でドル円の売買をしたとしても、業者によってはひどく不利益を被りかねないところもあるという点には、相当注意が必要ということがわかるかと思います。
また、業者が設定している顧客保護のための強制ロスカットがきちんと履行されたのかどうかも非常に気になるところですし、大きく下げなかった業者では強制ロスカットを免れた顧客も存在しているはずで、どの業者を利用しているかで、かなり悲喜こもごもの結果を招いているであろうことも容易に想像できる状況です。
■暴落時はXMのNDD方式ゼロカットシステムが圧倒的に安全
海外FX業者というのは、日本の金融庁からも目の仇にされていますし、税制上も国内業者のような優遇策がなく、資金の出し入れにも余分なコストがかかるというデメリットを持っていることは事実です。
しかし、今回XMTradingの暴落直後からの取引状況を確認してみますと、実に淡々としており、しかも透明性も安全性も非常に高いことが改めて確認できた次第です。
とくに瞬間的に値が出ないという場面はあっても、その後の回復は異常に早く、国内業者が暴落後30分以上経過しても、大騒ぎが収まらないのとは全く状況が異なることがあらためて確認できました。
自らタイトなストップロスをおいておかなければ、強制ロスカットなどでかなりの金額を失ってしまうのは国内業者も海外業者も同じですが、海外業者の場合投入した証拠金以上の損失は絶対出ませんから、暴落の挙句に追証を求められるという悲劇的事態だけは完全に避けることが可能です。
現段階では、業界団体である金融先物取引業協会も追証発生件数や金額のとりまとめは発表していませんので、結果を得るにはもう少し時間がかかりそうですが、国内業者を利用したことで、値飛び、値消し、ワイドスプレッド起因で強制ロスカットをはるかに超える損失がでて追証を求めらることになるのであれば、とにかく安心して利用することはできないのが現実となります。
2019年はまだ始まったばかりで、ここから先FX市場はさらに厳しい暴落などの相場激変が待っている可能性がありますが、証拠金を守る、追証などで想定外のダメージを受けないという視点で考えますと、XMのような海外FX業者をうまく利用していくのも、安定的にFX取引を進めるためには、必要なものになってくることを実感させられます。