海外FX業者のほとんどが採用しているシェアウエアのプラットフォームであるMT4は、人が自分の判断で行う裁量取引とは別に、様々なEA・エキスパートアドバイザーを利用して自動売買やチャートシグナルの受け取りなどが可能となりますが、実はMQL5のコミュニティに参加すればトレードの達人の売買シグナル配信を受けてコピートレードもできるようになっているのです。
本邦の店頭FX業者でもMT4を導入しているところがありますが、このコピートレードについては金融庁から様々な規制を受けていることから積極的にその利用法の詳細を触れることはありません。
そこで今回は海外のFX業者が提供するMT4を使って、コピートレードをしてみたらどうなるかについていくつかの実験的トレードを行ってみましたので、その内容をご紹介してみることにいたします。
ここでご紹介するのは、
・MQL5 というMT4のコミュニティで発行されるシグナルを利用したコピートレードのケースと、
・専用のソフトを利用して特定のMT4のアカウントの売買をコピーしてトレードで見る
という2つの手法になります。
もくじ
■MQL5のコミュニティのシグナル配信とは?
まずはMT4で、どうやってコピートレードのシグナル配信を受け取ることがえきるかについてご説明したいと思います。
まず、MT4が使えるFXの口座を用意します。
このシグナルはリアルな口座でもデモ口座でも利用することが可能になります。
さらにMQL5コミュニティにに登録しますと、あらかじめこのコミュニティでコピートレードのシグナル配信をおこなってくれる元になるトレーダーを見つけることができます。
シグナル配信はMT4プラットフォームで行うトレーダーと、MT5プラットフォームで行うトレーダーがいますので、まずそこを確認してから選択することになります。
MQL5のシグナル配信サイトにいきますと上記のようなトレーダー紹介が行われており、それぞれに記載されている料金を支払うとシグナルを受け取ることができるようになります。
概ね30ドル程度が多いですが、無償で配信してくれる良心的なトレーダーを見つけることも可能です。
それぞれのトレーダーは取引き履歴、口座残高、実績情報などが公開されていますのでそれを頼りに選別していくことになります。
お目当てのトレーダーのコピートレードのボタンをクリックしますとMt4が自動的に起動し、購読をクリックしてあらかじめ設定したパスワードを入力していきます。
ただ、それぞれのコピー元トレーダーが開示している実績情報だけでは、正直なところお金を支払ってまで選択していいものかどうかは相当迷うことになりますので、簡単には決められないというのが実際の問題になりそうです。
コピートレードを行う場合には、元のトレーダーと同じようにリカク、損切を行うのカラムにチェックを入れればまったく同じように決済するようになります。
逆にチェックをいれなければ作ったポジションは自分で決済が可能ですが、これではコピートレードとは言えない状況になってしまいます。
ここで元のトレーダーの売買に完全依存するならば、やはり完全コピーが必須で、このカラムにチェックを入れれば全てが完了となります。
さらに最大証拠金使用率を設定することが必要になります。
コピー元のトレーダーの口座残高を基準しますが、元のトレーダーとまったく同じ資金を用意できるならば完全にコピーすることになりますが、自分の残高が10分の1の場合には、元のトレーダーの発注量の10分の1に設定しなおす必要がでてくることになるのです。
コピートレードの売買情報を提供してくれる元になるトレーダーは、欧米在住者がほとんどで日本人が登場するのはかなりレアケースとなっています。
国内ではこうしたシグナル配信は、基本的に投資助言業の資格をもつ人間だけに金融庁が認めていることから、国内店頭FX業者はたとえMT4を導入していてもこの領域については、ほとんど詳細説明したり内容紹介をしないのが基本になっているのが現状です。
これが大きな要因となって、国内ではMT4を利用したコピートレードは流行らないわけです。
逆に海外のトレーダーの場合は素人に近い人でもシグナル配信のビジネスができますから、儲かる自動売買のEAを探すよりも優秀なトレーダーを見抜いて選択するのは至難の業といえます。
■実際にMT4コピートレードを利用した感想
このMQL5コミュニティを通じたシグナル配信によるMT4コピートレードを、実際に体験してみました。
さすがに有償のトレーダーは、誰を選ぶのば間違いないのかまったく判断できないことから、まずは無償でシグナル配信をしてくれるトレーダーを選んで、そもそもコピートレードがまともに使えるものなのかどうかを見極めるためにデモ口座を利用して実験してみることにしました。
とにかくリカクもストップロスも、相手におまかせ設定してみて、こちらはデモ口座なので先方の設定資金とまったく同じ規模で売買をしてどのぐらい正確にトレースできるかを見極めてみたというわけです。
・シグナル配信がまず遅い
このシグナル配信、よくよく考えて見ますとコピー先のトレーダーが売買した情報が、MQL5コミュニティサーバー経由で自分の使っているサーバーなPCに送られてくるので、お互いにどこで売買しているかによって相当長い距離をデータが行き来するため、確実に配信が遅れることがわかりました。
たとえばXMのMT4で取引し、コピートレードを行うクライアントPCが日本にある場合には、海外のトレーダーからの売買シグナルがまずMQL5のサーバーに送られ、そこからコピートレーダーのPCなりサーバーに配信され、それをさらにXMのサーバーに売買オーダーとして送りつけることになります。
このプロセスに関わるすべての人とサーバーが、欧州域内ならばいいかもしれませんが、極東地域の日本で受けて売買するのは相当不利な取引であることうことを痛感させらることになるのです。
とくにスキャルピングに近い超短時間の売買をされてしまうと、コピー元のトレーダーがベストタイミングでエントリーしてリカクしたとしても、コピーする側はそれをまったくうまくトレースできないことから、利益機会を逃すケースもあって自働の売買画面をみていますと、かなりハラハラさせられることが多くなりました。
・スプレッドとそもそもの約定力の違いも気になる
コピートレードで一番いいのは、コピー元の相手もコピーする自分もXMならXMの口座で、しかもVPSを利用して元のサーバーからごく至近距離でコピートレードが行えるといった環境が設定できるのがベストなわけです。
たとえばニュージーランドにサーバーのある業者で取引して、MQL5のサーバー設置場所の欧州にデータが飛んで、そこから日本のPCなりサーバー設置場所にシグナルが転送されるとなると、その行き来だけで数万キロをデータた旅することなります。
そこにスプレッドの違いや業者のサーバーの約定力の違いがでてしまいますと、元のトレーダーの利益の7割位しか確保できないといった厳しい状況に陥ることもある点には相当注意が必要になります。
スキャルピングでは、利益が出ずに逆ザヤで損切りしているかのようなトレード状態になることもありますから、相当気を使わなくてはなりません。
これがある程度ポジション保有時間にゆとりのあるスイングトレードであったり、かなり長めのデイトレといったものですと、比較的利益のトレースもうまく行えるようになるわけですが、5銭10銭といったレベルを追いかけるスキャルピング取引をやられる場合には、予想以上にうまくいかないのが正直なところとなってしまいました。
・知見のない通貨ペアで売買されるのもかなり心配
もう一つ気になるのは、まったく知見のない通貨ペアで取引されてしまいますと、同じFXの世界でもかなり未知の領域となってしまうことです。
たとえばユーロ豪ドルなどは日頃見たこともない動きになりますし、業者によっては相当な広いスプレッドになっていますから、いくら勝てるといってもシグナルを拾って売買が成立してチャートを見ていますと、これも相当ハラハラさせれられることになるのです。
一定のロジック設定の自動売買EAも、日足ベースなどで取引されていますと、みるみるうちにドローダウンが大きくなって、精神衛生上よろしくない時間帯が増えることが多くなります。
コピートレードの場合も、自分とは全く異なる発想と取引手法のトレーダーが勝手に売買しているのを同期させているだけですから、よほど信頼がおけないと正直なところ見ていられないというのが率直な感想になりました。
短時間ではありますが、コピー元のトレーダーがほぼ100PIPS程度稼いだのに対して、こちらはその7割弱位しか稼ぐことはできず、とくにスキャルピングに近い取引をするトレーダーの売買をコピーするのは、よほど取引条件が元のトレーダーと揃っていないかぎりシンクロさせても稼げない印象が強まってしまいました。
コピートレードと一口にいいますが、実際にコピーしてみますと完全に利益をシェアさせてもらうには、相当取引き環境や条件をそろえることが必須になるということを改めて感じさせられた次第です。
■Forex Copierというソフトも試してみた
実はコピートレードに関しては、もう一つ実験を試みてみました。
それはForex CopierというMT4用のソフトを使って、MQL5のシグナル配信に頼らず、自分のトレードを2つ持っているMT4の口座でトレースしてどの位利益がでるかを実証してみるという実験でした。
本来は誰か他人にお願いするのがより実証性の高いものになるわけですが、まず自分のトレードを完全に同期した場合に、スプレッドや約定力の異なる業者でどのぐらい利益確保がトレースできるものなのかがこの実験の大きな目的となりました。
利用したのはコピー元がXMの888倍、もっとも日常的に利用しているドル円をベースにして、コピー先はFBSの3000倍のレバレッジ口座でどれだけ稼ぐことができるかという試みとなりました。
このForex Copierは、ライセンス商品ですからネットで簡単い手に入れられ、どこの海外FX業者のMT4でもすぐに利用できるものとなっています。
この実験では失敗しても大損しないように、XMのほうの原資は3万円、FBSは200ドルを超えるとレバが2000倍になってしまいますので、100ドル(1万1000円)というかなり少額で試してみることとなりました。
■実際にコピートレードをするとスプレッドの違いが大きなネック
XMのマイクロアカウントの場合、ドル円はほぼ1.8銭から2銭程度のスプレッドで売買できるのですが、FBSのほうは3銭というそもそもスキャルピングには向かないスプレッドになっているので、かなり慎重に売買をしてみることになりましたがやはり問題は多発しました。
・コピートレードのサインが出るのに時間がかかり注文がスリップ
スキャルピングというのは、まさにプライスアクションを見て売買するものとなるわけですが、このXMとFBSのドル円チャートについてリアルタイムでスクリーンショットをとってみますと、以下のような感じでそもそもスプレッドの違いから表示される価格が結構違うようになるのです。
売買シグナルというのはいくらで買え、売れというものではなく、そのタイミングに買った、売ったというシグナルがでるのが基本ですから、コピー元をまったく真似したトレードを行っても同じように利益がでるとはまったく限らないのです。
こちらも結果からいいますと、XMで自分のスキャルピングトレードで一定時間にほぼ1万円儲けられたものを、自らの別のスプレッドの違う口座でコピートレードしてみても、5銭とか4銭などというきわどいトレードをしてしまいますと、結局XMで利益がでてもFBSでは利益を確保できず、ほとんど利益の出ない売買が多くなり、結果は6000円を確保できないほどの惨憺たるものになってしまいました。
もちろん一回のトレードで、1円近い利益をとるといった気の長い売買をするのであれば、利益の確保率はより高まることになりますが、そもそもハイレバレッジこそスキャルピングで利益を積み上げるべきと考えますと、このコピートレードは相当な条件が揃わない限りワークしないことを改めて思い知らされた次第です。
・異なる取引条件のMT4同士でコピートレードをしても簡単には儲からない
人によっては、ハイレバのFX口座にこうしたコピートレードツールを実装して、自分のコピートレードやEAを使った自動売買を複数の口座で展開することで利益を増幅させているという夢のような話も聞きますが、とくに888倍の取引を3000倍の環境で増幅させてやろうなどという皮算用を思いついても、スイングトレードでもしない限りはそう簡単には実現できないことを改めて思い知らされる結果となりました。
自分でおこなってある程度利益がでているものであっても、完全に利益をコピーするのは予想以上に難しいという結果がでてしまったのは相当ショックで、頭のなかで思い描くコピートレードと実際のシグナルベースでトレードを真似るという状況とは、かなり違うことに愕然とさせられたというのが正直な感想です。
■将来AIが実装されるようになれば活路はあるかもしれない
人様が行っているトレードをじっくり見るというのはそう機会のあるものではありませんが、同じ通貨ペアでも相当人によって発想が違うことを目の当たりにしますとたしかに面白いとは思いますが、そこにリアルな証拠金がかかってきますととてもではないですが、安心して見ていられないという気分のほうが大きくなるものです。
そのくらい、人間の行うトレードというのは真似るのが難しいものです。
機械的にやれば問題なしと思っていましたが、取引環境まや資金状況まで完全にシンクロナイズできないと、同額利益を確保することはできないものなのです。
この先取引条件を、さらに細かく絞ってトレースがしやすいようなAIにより、詳細制御された売買が実現できるようになればコピートレードはもっとうまく実現できるようになるのかもしれませんが、人がやる裁量取引の場合スキャルピングは基本的に無理であり、MT4だからMQL5コミュニティに入ってコピートレードで儲けようと安易に思うのは今のところはやめておいたほうがよさそうな状況です。
もちろんMT4というプラットフォームに、こうしたコピートレードが可能になるポテンシャルが存在していることは高く評価したいと思いますが、勝手に期待していたほど簡単にはコピーできない点には十分な注意が必要です。
自分でヘタな取引きをするより、達人のFX取引がコピーできればそれに越したことはないわけですが、eToroのように同じサーバー内で処理するようなソーシャルトレードであればまだ可能性はあるものの、異なる業者のサーバー環境で行うのはまだまだ課題が残ることになりそうです。
■まとめとして
海外FX業者で普及している売買プラットフォームであるMT4を利用すれば、確かにいくつかの方法を使ってコピートレードが実際に可能になりますし、特定のEAを走らせて複数の口座で、そのコピートレードを行うといった荒業も物理的には可能です。
しかし接続環境やPC,サーバーなどのパフォーマンス、さらに口座を提供するブローカーの取引条件、スプレッド、約定力といったすべての要素が絡み合ってコピー元のトレーダーの売買とまったく同じ売買を実現するのは、至難の業であることだけはしっかり理解していただきたいと思います。
将来的にはより精度の高いコピートレードが実現できることになるのかもしれませんが、今のところこうしたことに努力するよりは自前でスキャルピングがうまくなることのほうが、ハイレバレッジの海外FXで勝ち残って利益を稼いでいくためには必要な能力になるのではないでしょうか。
そのくらい、コピートレードには難しい問題が残されているのです。
大変勉強になりました。ありがとうございました。
一点質問がありますが、海外業者にコピートレードをお願いするために、口座IDやパスワードを提供しないといけないと思いますが、これでまったく知らない相手にこのような大事な情報を知らせて、もしトレードで負けても仕方がないですが、変に口座のお金が取られちゃうとかの詐欺みたいな事件もあり得ますかね?
そのあたりは、海外の場合口コミなどをしっかり見極めることが大切ですね。