海外FX業者ではすでに定番化している取引ツールがメタトレーダーですが、このシェアウエアソフトにはMT4と呼ばれるバージョンとMT5と呼ばれるバージョンアップされたソフトが存在します。
今回は、そのうちMT5についてご説明していくことにいたします。
■MT5とは?
メタトレーダーのソフトウエアは現在キプロスに本拠地を置くMetaQuotes Software社によって2011年にメタトレーダーソフトの最新版としてリリースされたもので、既に登場から7年もの歳月が経過しています。
当然バージョンアップされた機能によりMT5のほうが使いやすくなっていることは間違いないのですが、いくつもの大きな問題を抱えていることから、今も市場では完全にMT4からMT5へと利用業者の乗り換えが進んでいないのが現状です。
■MT4とMT5の違い
MT4とMT5は実際に利用してみますとわかりますが、見かけは殆ど区別がつかない状況で、マイクロソフトのウインドウズでいうとXPとセブン程度の差も感じられないものとなっています。
しかし、こちらのほうは決定的な問題があります。
それは、互いのプログラムに互換性がないのです。
MT4はMQL4のプログラムで書かれており、MT5はMQL5のプログラムにより書かれているわけですがここに互換性がないことから、MT4用に開発されたインジケーターやEAといったものを、MT5用に作りかえなくてはならないという非常に大きな問題を抱えているのです。
利用上の違いとしては、チャートの時間足の設定がMT4の倍以上に増加し、利用者のトレードスタイルにあわせてより細かく表示ができるようになっています。
またナビゲーターウインドウに直接必要なフォルダを追加してEAやインジケーターを整理して利用できますので、使い勝手は確かによく細かな設定も可能で操作性は上がっています。
もちろんスピードも早くなっていますが、それだけの材料ではなかなかMT5への移行が進まないのが現実の状況なのです。
■拡張機能搭載によりMT5へのシフトが加速していない
たしかにMT4からの拡張機能搭載は、使い比べてみると違いがわかり便利であることは確かです。
しかし、MT4が世界で600社以上のCFD,FX業者で広範に利用されるようになり、しかもエンドユーザーが4000万人以上に膨れ上がっていることから、既存のMT4用のEAやインジケーターのほとんどすべてがMT5用にマイグレーションされていない状況では、いつまでたってもプラットフォームの乗り換えが進まないのが現状です。
またトレードツールという性格上、WEBブラウザのようにさまざまな改良な日夜進むといった商品でもないことから、すでに登場から15年目を迎えるMT4が依然として市場の定番プラットフォームを形成しており、開発会社もサポートを打ち切ることをしないので、いつまで経ってもMT5が主流にはならない状況にあります。
これは明らかにソフトウエア開発会社のアップグレード戦略の失敗ではないかと思いますが、特別軌道修正の動きも出ておらず、当分このままの状況が続くものと思われます。
■「MT4」と「MT5」の両方と使った感想
現在XMを中心にしてトレードを行っていますが、同社ではMT4とともにMT5も提供してくれていますので、同じ通貨ペアでの取引で性能や使い勝手を比較することは可能です。
本来はMT5のほうで仮想通貨FXの取引ができましたので使い分けをしていたのですが、今のところ仮想通貨FXの取引が中断してしまいましたので、MT5のほうはほとんど出番がない状況が続いています。
一般的にはMT5のほうが稼働にメモリを喰うと言われますが、比較的ハイエンドなマシンを利用していますと動作に違いは感じません。
ただ、最初見かけがほとんど同じだったことからMT4で使っていたインジケーターを移植したのに全く動かず、驚いたことがありました。
やはりすべてのインジケーター類はMT5用のものを新たに探してくる必要がありますが、実際に供給されているものは有償、無償を含めて驚くほど限定的でありせっかくMT5がフォルダをカスタマイジングして整理、保存できるのにも関わらず整理しなくてはならないインジケーターが存在しないというなかなか皮肉な状態を続けています。
基本的には少しでも新しいソフトを使ったほうがいいとは思いますが、世の中でほとんどMT5が普及していないだけのことはあり、XMのように仮想通貨はMT5を使わざるを得ないといった理由が与えられないかぎり、積極的に使う必要はほとんど感じられないというのが正直な印象です。
細かいところではあまり使用感に違いはありませんが、一つだけ困るのは両建てを行うと通貨ペアごとに売買が合算されるので自動的にロングとショートの数だけ自動決済されてしまう点です。
このあたりの売買システムのポジションの取り扱いはMT4と全く異なりますので、MT4からMT5にいきなり移行しますと使い方を誤る可能性が高く注意が必要です。
■MT5に対応する主要な海外FX業者
現在MT5が利用できる業者は、IC Markets,InstaForex,FXOpen,TeleTrade,
CentroFX,radeview,FBS,Ace Forex,FXPro, IFC Markets,XMの各社になります。
実にニュージーランドのAce FrorexだけがMT5のみを実装していますが、そのほかの各社はMT4も選択できるようになっており、顧客の判断でどちらを利用するかを選択していることがわかります。
■まとめとして
明らかにMT4からは進化しているMT5ですが、その互換性がないということから積極的な利用が進んでおらず、単純にMT4からMT5に乗り換えますと、MT4でできていたことができないという大きな問題に陥ることになってしまいます。
したがってよほど積極的に利用しなくてはならない理由がない限り、MT5はあまりお勧めできないのが現状の仕様環境といえます。
いきなりMT5を使い始めるのならば特別違和感もないかとは思いますが、MT4から乗り換える場合には相当注意をしていくことが必要になりそうです。