海外FXは、少額の投資資金でも大きな利益を期待する事が可能でありボーナスもついてくることから、場合によっては「億」という金額を稼ぐこともできる人気の投資法です。
もちろんFX取引には様々なリスクもあり、万が一何かあったときに備えて、自分たちの資産を守れるように対策を行なっておくことも重要となります。
FXトレーダーの資産を守るための『信託保全』について解説していきます。
【1分でわかる信託保全】
信託保全はあるに越したことはない。
海外の信託保全は国内のものとはかなり異なる。
破綻や倒産が起きてはじめてわかる国内との差。
EU圏は国として金融機関や業者の利用者を守らない方向。(ベイルアウトからベイルインへ)
ハイレバ業者はセーシェル等、金融システム詳細不明のところが殆ど。
業者自体の提示する取引約款をよく調べる必要あり。
XMのように保険会社委託なら逆に安心という例もあり。
それぞれについて詳しく解説していきます。
もくじ
■海外FX業者の顧客資産の保全例
海外FX業者の中には信託保全ではない業者もあります。
自分の資産を守るためにも、極力信託保全のある業者を選択したいところです。
各海外FX業者が、信託保全か否かをご紹介していきます。
『海外FX業者の資金管理について』
業者名 / 信託保全情報
XM 分別管理
ICF(投資家補償基金)加盟(2万ユーロまで保証)
TitanFX 分別管理
FXPro 分別管理
LAND-FX 信託保全
AXIORY 信託保全
iFCMarkets 分別管理(最大100万ユーロまで保証)
■そもそも信託保全とは?
信託保全とは、FX会社が顧客から預かった資金(保証金)を第三者(信託銀行などの金融機関)に委託し、万が一FX会社が倒産したとしても第三者を介して取引資金が返還されるというシステムです。
私達トレーダーは、FX会社に口座資金を預けて取引を行なっていますが、会社が急に倒産した場合、私達が預けている資金は必ずしも返金されるとは限りません。
会社が倒産時に「全くお金が無い」という状況ならば、「返金不可」という状況になることは十分に考えられます。
一見他人事のように感じますが、このような不測のトラブルはいつ自分に降りかかるか分かりません。
そのため、例えそのような事態になっても大丈夫なように、私達の資産を守ってくれる信託保全がある業者選びをする事が重要となります。
国内の店頭FX業者でもつい10年ちょっと前までは、FX業者が自らの運営資金と顧客から預かった資金を同じ財布に入れて管理するというずさんな経営をしていましたが、金融庁による厳しい行政指導により現在の信託保全という形態が必須の状況へと変化した経緯があります。
■顧客の資金管理の種類
顧客から預かった資金管理には種類があり、タイプによって「顧客の投資資金」の管理方法が異なってきます。
実際に、業者を決める際に重要な判断基準となりますのでご紹介していきます。
① 分別管理
分別管理とは、「経営用の資金」と「顧客の投資資金」を第3者の信託口座に委託せず、自社で分けて管理することをいいます。
海外FX業者が経営していくにあたって使用するのは「経営用の資金」のみであり、「顧客の投資資金」は分別管理をしているから安心だとしていますが、こればかりは破綻してみなければまったくわかりません。
業者が自分の運転資金と、顧客から預かった資金を、別の財布に入れて管理しているだけですから、少なくともEU圏の金融当局からはこれは信託保全ではないとの指摘を受けています。
② 信託保全
信託保全は、信託銀行や信託法人など海外FX会社とは異なる、第3者の信託口座に「顧客の投資資金」を預けておく資金管理方法となります。
業者が倒産した場合、法律に則って顧客資金が返還されますので分別管理よりも保障性は高いです。
ただし、この信託保全の形態をとっていても破綻後にすぐ信託銀行が個人に返金するのではなく、あくまでも管財人が判断した上で返却されるため、すぐに返金されるかどうかはわからないのが実情です。
また、欧州圏でライセンスを取得しているFX業者の場合には決して無限保証ではなく、一人2万ユーロを上限としていますので足元のユーロの価格でいえば260万円程度までしか保証されないことになりますので、それを超える多額の資金を口座に保有し続けるのは自己責任で、リスクになるということは十分に理解しておかなくてはなりません。
③ 一部信託保全
一部信託保全とは、「顧客の投資資金」の一部を投資家補償基金(ICF)に加盟することで、何かあったときには業界内の相互共済保険のような形で保証するというやり方で、こちらも最大2万ユーロまでは保証されるとされています。
上記3つの中では、第3者の信託口座に全ての「顧客の投資資金」を預ける『信託保全』が最も保証性が高いように見えますが、もっとも安全性の高いと思われる欧州の銀行でさえEUは既にベイルイン制度を適用しており、破綻時には投資家に一定の損失負担を義務付けているわけですから、FX業者が破綻したときに信託保全だから全額返還されるので、安心と考えるのはとんでもない思い込みといえます。
■自分で業者のページを見て最新の情報を確認する
海外FX業者の信託保全についての情報は、各業者のHPで紹介されています。
ですので、信託保全についての情報は業者のページを見て「最新の情報」を入手すべきです。
また、最近よくある海外FXの「キャッシュバック系のサイト」は、信託保全等の情報を更新していない可能性もあるため信頼性に疑問が残ります。
口座開設後「情報と違った」とならないように、直接業者のサイトにアクセスして最新の情報を確認しておくことが必須の状況です。
■ICF(投資家補償基金)とは
キプロスの金融ライセンスを取得している海外FX業者は、日本で人気の業者が多いです。
XMやFxProなどはキプロスブローカーとなります。
そんなキプロスブローカーには、ICF(投資家補償基金)に加盟する事が義務付けられていることをご存知でしょうか?
もしキプロスブローカーを利用していて、万が一そのブローカーが倒産した場合、ICF(投資家補償基金)から一定の保証を受ける事が可能となります。
ただ、XMは既に欧州金融当局から、かなり厳しくボーナスなどの過剰プログラムを廃止するように指摘を受けており、もっとも人気のあるプログラムだけに日本人個人投資家を相手にしたビジネスはセーシェルにエンティティを移していますので、ICFの基準は満たしているといえますが、必ずしもキプロスの業者ではなくなっている点にも注意が必要です。
この相互扶助共済の仕組みに加入していれば、最低2万ユーロまでは返却されることになりますから、何もないよりは安心といえます。
■ICF(投資家補償基金)の保証内容
ICF(投資家補償基金)に加盟している業者ならば、倒産したとしても顧客へ上限を2万ユーロ(約260万円)とした保証が行なわれます。
ICF(投資家補償基金)の保証は第3者による保証ですので、業者の倒産後の資産状況などの影響を受けません。
そのため、保証はほぼ100%受ける事が可能とされていますが、加入しているFX業者が全社共倒れになるような状況では果たしてどこまで対応されるのかは潰れてみないとわからないのではないでしょうか。
■海外FX業者の信託保全は強制ではない
海外FX業者は、分別管理や全額信託保全など業者によって保証のタイプは様々ですが、実は日本の金融ライセンスを取得している国内FX業者は、全ての業者が全額信託保全を採用しています。
そのため、金融丁登録を行なっている国内業者を利用していれば、たとえその業者が倒産したとしても顧客の資産はしっかりと守られるのです。
では、海外FX業者の場合はどうでしょう?
海外FX業者の場合、顧客の資産は分別管理を行なう事が義務付けられていますが、信託保全を行なうかどうかは業者の判断に委ねられています。
最低限分別管理は行なわれていますし、最大2万ユーロを保証してくれるICF(投資家補償基金)に加盟している業者も少なくはないので保証が全くない訳ではありませんが、不安は残るところです。
また、海外FX業者は情報が不透明な部分が多いので、できるだけの備えはしておきたいところです。
そういう意味でも、信託保全という保証の有無は大事になってきます。
■分別管理と信託保全の安全性の違い
分別管理と信託保全は、どちらも「経営用の資金」と「顧客投資資金」を分けて管理するという点では一緒です。
しかし、問題は「会社が倒産した場合、しっかりと顧客の資産が保障されるのか?」という点です。
実は分別管理の場合、会社が倒産してしまったら先に債権者に「顧客投資資金」を押さえられてしまう可能性がありますし、なにより業者自身が苦し紛れに顧客の資金に手を出す可能性は十分にありえる状況です。
そうなれば、当然ながら顧客資産の返金は難しくなります。
しかし、第3者の金融機関に「顧客投資資金」を預けておく信託保全ならば、会社が倒産したとしても分別管理よりは安全となるわけです。
一見すると同じ保証内容に見える分別管理と信託保全ですが、実際は全く異なるという点には注意しなくてはいけません。
■倒産リスクを減らすためにECN業者を選ぶ
信託保全を採用している業者はそれほど多くありません。
そのため、中には分別管理を採用している業者の口座を開設するトレーダーもいらっしゃるでしょう。
そんな中で、比較的安全なのがECN方式を採用している業者です。
STP方式もECN方式も、いわゆるNDD(ノンディーリングデスク)と呼ばれるもののひとつで、業者の中に反対売買を行う部門を持たないですべて外部につないでアルゴリズムで最適化を図っていますが、ECNはインターバンク直結で売買しますからもっとも最適化の可能性が高くなります。
一方STP方式は、ストレートスループロセッシングなどという名称にはなっていますが、途中にブローカーが入ることになりますのでブローカーがカバー先とのマッチングを図るという点では、ECNよりもファンクションが多くなる点が問題となるのです。
STP方式の場合には間に入ったブローカーがなんらかの操作をしている可能性がありますので、ECNよりもリスクは高くなるわけです。
ただしECNだから倒産リスクは低減するというのは、必ずしも賛成できない見方になります。
たとえば2015年1月にそれまで永久に為替介入をして対ユーロ価格を、一定レベルよりもスイスフラン高にはしないと声高に宣言していたスイス中銀が、いきなりこれ以上介入できません、というまさかのギブアップ宣言を行ったことで主要通貨は暴落することとなり、英国を本拠とする欧州やロシアでも有名なFX業者であるアルパリはあっという間に破綻を余儀なくされ、日本法人も別法人ながら即日撤退となってしまいました。
この会社ECNを利用していたようですが、暴落が起きればインターバンクと直結だろうがブローカレージが入っていようが破綻するものは破綻するわけで、ECN方式で信託保全なら他の組み合わせよりは多少は安全程度で、絶対安心だというのは言い過ぎです。
■XMの保険会社による信託保全
そんな中でXMの信託保全は、特定国の金融取り決めを順守するというよりもさらに、顧客の資金の保護を考え、専門の保険会社と総合的な契約を締結するという方法を選択しています。
万が一の場合には、EUにおける信託保全の上限と同等の資金の支払いができるように準備しているのです。
この場合、XMが保険会社と契約した支払い条件をクリアすれば、すぐに保険金として支払われますので、分別管理や信託保全よりさらに踏み込んだ安全性を担保したサービスになっていることがわかります。
■結論→少なくとも信託保全がついている業者を選択する
投資を行う場合、何か予期せぬトラブルが発生したときに備えて保険をかけておくものです。
それは海外FXも同様であり、「倒産なんてどうせしない」と考えていたとしても、倒産してしまった場合のリスクの大きさを考慮すれば最低限の備えは重要となります。
また、いくら提供する取引環境がよくても「倒産して資産もお返しできません」なんていう業者を選択してしまっては意味がありません。
自分の資産を守るためにも、信託保全がついている海外FX業者を最低限でも選ぶことが重要になります。
ここまでお読みいただくと、それでも欧州圏で活躍している海外FX業者といえども、決して安心というわけではないことがよくお分かりいただけると思います。
リスクヘッジ策としては、一つの業者にあまりにも大きな資金を投入しないことです。
たとえば日本では非常に高いXMも、口座全体で2万ユーロレベルを超えると888倍のレバレッジが使えなくなるわけですから、日常的に多額の資金をこの口座に入れておかないという自己管理を徹底して行うことが重要になります。
そもそも国内であれ海外であれ、FX業者が経営危機に直面するというのは、平時にビジネスをしているときにはほとん起こらないものです。
むしろ暴落のような、想定外の大惨事が起きたときに大きな損害を出して破綻するわけですから、その中で売買している個人投資家の多くもFX業者と一緒に投入資金を失うケースが多く、信託保全でいくら守られていても結局投入資金をほぼ全額失ってお仕舞いになることが多くなります。
逆にゼロカットシステムが導入されていることにより、証拠金以上の損失を求められないことのほうが、海外業者を利用しているメリットになっているということも認識しておくべきでしょう。
仮想通貨で、NEMの大量盗難が起きて大問題になったコインチェックも、業界は若干違いますがいわゆる分別管理をしていた会社のひとつですが、倒産したわけでもないのに顧客の資金は右から左に返却はされていない状況です。
国内でもこの調子ですから、キプロスやそれ以外に本拠地を置く業者が素晴らしく安心と思いこむことだけは避けたほうがよさそうですし、常に業況をチェックするという習慣をもつことが重要になりそうです。