国内FX業者の取引には、金融庁の厳しい指導のもとで強制ロスカットという制度が導入されています。
よく個人投資家でも、最悪この強制ロスカットという制度があれば、証拠金は投入額以上にはかからないと高を括る発言をする人がいます。
しかし、実際に国内のFX業者との相対取引きの約款をよく読んでみますと、場合によっては投入した資金を超える損失がでる可能性があることが明確に謳われていることがわかります。
「国内FX業者の取引規定として、取引システムやサーバーなどの不具合に起因するトレーダーの損失に関する一切の責任を免責とし、トレーダーに追証する。」国内FX業者の約款より
これが、追証と呼ばれるものです。
一般的には投入した資金よりも、保有しているポジションの含み損が増えることで要求されるのが追証を思われがちですが、相場の急激な変動により証拠金を超える損失がでたときにFX業者から要求されることになるのが追証なのです。
一方で、日本業者と比較して海外FX業者は「追証なしのゼロカットシステム」を採用しているところが多いので、安心してFX取引が進められます。
このゼロカットシステムについて詳しく解説していきます。
■海外FXはゼロカットシステムで追証なしの安全装置
・ゼロカットシステムとは?
国内FXにある追証ありの制度と比較して、海外FXではその心配をする必要がありません。
ゼロカットシステムという制度を導入している海外FX業者を利用することで、いかなる事態が起きても利用者は投入資金以上は一切追加入金の必要がないのです。
このゼロカットシステム(ゼロカットサービス)とは、為替の急激な変化に対してFX業者の強制ロスカットが間に合わない場合でも、損失分を顧客に請求することを避け、FX業者側で受け持つというサービスカット方式となります。
国内FXブローカーが設けていないこの制度は、ハイレバレッジという非常にリスクの高い取引をする場合には設定されていることが極めて重要になります。
【ゼロカットシステムを採用している主要海外FX業者】
AXIORY | |
FBS | |
FxPro | |
GEMFOREX | |
IFCMarkets | |
IFOREX | |
IronFX | |
LAND-FX | |
TitanFX | |
Traderstrust | |
XM |
・追証(借金)が発生しない
この制度のおかげで顧客、トレーダー側に借金が発生することはなくなります。
国内FX業者の取引ではこれが適用されていないことから、常にトレーダーは損失リスクと背中合わせに取引を行うことになりますが、海外FXではほとんども業者でゼロカットシステムが導入されていることから免責となるのです。
そういった意味で「ゼロカットシステム=追証なし」という言葉に置き換えられます。
定義的には委託証拠金率が最低保証金維持率を下回った時に、追加で保証金をFX口座に預け入れなければならないことを指します。
この二つは基本的には同じと捉えていただいて構いません。
これはFXトレーダーにとってリスク管理の点においても歓迎される制度となります。
追証がないと安心して取引できるのでストレスも軽減されます。
・損失が発生しても証拠金の額まで
もちろんFX取引は投資であり市場取引である以上、損失することは日常的に起こりますが、それはあくまで取引口座に預けた資金の範囲内ということです。
なのでFXというものは性質上、預けた証拠金をすべて失う可能性はありますが、それ以上のことは起こりません。
FXトレードで莫大な借金を負ったなどという話はFXブログなどで良く見かけますが、きちんとゼロカットシステムを採用している海外FX業者を利用していれば避けられた被害だったのです。
国内FXを利用していてこの暴落に巻き込まれた人たちは、追証が発生するという悲惨な状況になってしまったのです。
・ゼロカットシステムで、証拠金がマイナス表示になる場合
よくゼロカットシステムを導入している海外FX業者の管理画面で、証拠金がマイナスになるケースがあるという投稿がネットなどにも出されていますがこれは事実です。
たとえばXMでは証拠金が20%を切る段階で強制ロスカットがかかりますので、本来は何も資金がなくなることはないはずなのですが、相場の急落などでは平均的なスプレッドが大きく広がってしまいそれが証拠金以上の損失をもたらすような場合には、管理画面の取引き残高が一時的にマイナスになるケースもあるのです。
これは翌日の朝6時のロールオーバー時に修正されるか、新たに入金した段階で完全に解消されますが、業者内の仕組みとしてこうした表示が示現することがあることは事実ですが、利用者には追証は一切発生しませんので安心して取引可能です。
(参考になる画面がありましたら、その時に掲載させていただきます。)
・どの通貨ペアでもゼロカットシステムは対応しているか?
基本的にゼロカットシステムを導入している海外FX業者では、提供するすべての通貨ペアに対してゼロカットシステムを適用しています。
ただし業者もそれなりのリスクを伴うことになりますから、例えばロシアルーブルについては1000倍のレバレッジを提供する業者でも50倍に規制をかけるとか、一時的に特定通貨ペアについて取引中止を宣言するケースもあります。
最近では対ドルに対してトルコリラが激しく下落しましたが、この程度ではレバレッジ規制や取引停止は起きていませんので、業者がゼロカットシステムを睨んで取引に制限をかけてくる場合はよほどの暴落、暴騰通貨であると認識しておくべきでしょう。
・ゼロカットシステムのデメリットは?
個人投資家のトレードという視点てみた場合、ゼロカットシステムにはデメリットはないといえます。
もちろんその機能を提供する業者は今のところ海外業者しかありませんから、入出金のコストが高くなるとか、国内業者に比べて取引通貨ペアのスプレッドが広いといった取引条件面でのデメリットがあることは間違いありません。
しかし、相場が暴落した時にロスカットを入れていてもうまく機能しなかった、あるいはまったくロスカットを入れておらず莫大な追証を業者から請求される羽目になったという最悪の事態を考えれば、取引条件上に多少不利なものがあってもトータルで考えれば大した問題ではないといういことができます。
その位ゼロカットシステムは個人投資家を守る仕組みになっているのです。
・NDD取引方式・OTC取引方式とのゼロカットシステムの関係性
ゼロカットシステムは海外FX業者では、個人投資家保護と取引安全性の訴求のためにほとんどの業者で採用されている状況です。
その海外業者はまたNDD方式を採用して外部のカバー先にほぼすべての顧客からの取引を出していますので、強制ロスカットがしっかりかかれば業者が損失を被ることはありませんが、相場の急変でカバー先からの取引価格が一時的に出なくなるような場合はその分の損失を業者がかぶる事態になることもあります。
英国ではアルパリが2015年スイスフランショックで上記のような事態に追い込まれましたが、結局ゼロカットの契約条項があることから顧客はいかなる形でも請求不能ということで会社を破綻させることになっています。
一方国内業者が採用しているOTC方式というのは、社内にディーリングデスクをおいて取引き顧客同士の反対売買はそこで相殺し、残りの部分を業者内のディーリングマネージャーが顧客とは反対の売買をカバー先を利用して行っているとされています。
しかしこの反対売買も、どこまで行われているかはかなり不透明な状況です。
そもそも個人顧客の9割の取引は、利益が出る方向と逆さまの方向に取引しているとされていますから、いわゆる呑みの状態で放置しておいても業者にかかる損失はほとんどないのが実態で、この辺りが国内におけるOTC取引の不明瞭さを際立たせているともいえます。
このようにゼロカットシステムは、あくまで対顧客の取引きルールであり、NDDやOTCといった業者の売買形態とは直接関係はないことだけは理解しておかれるべきでしょう。
■追証が発生した過去のケース
相場のいきなりの暴落で、国内FX業者の利用者に実際に大きな追証を求める事態が過去に起きています。
記憶に新しいものといえば、2015年1月に発生したスイス中銀ショックがあげられます。
これは同年1月15日の夕刻に、それまでスイス中央銀行が対ユーロで1.2を下回るようなスイスフラン高に対しては永続的に介入を行うと市場に宣言していた介入オペレーションを、資金的な理由からいきなりやめると宣言したことにはじまります。
市場は当然寝耳に水の事態で、スイスフランはあらゆる通貨に対して暴騰しはじめ、それに伴ってユーロドルやドル円が大きな暴落に見舞われることになったのです。
以下の図は、そのときの相場の状況をしめしたものです。
ご覧いただくとわかる通り、通常は相場が下落すると強制ロスカットが適用されるのが国内FX業者のセイフティー取引の仕組みとなっているわけですが、このケースではなんと強制ロスカットに設定された金額がインターバンクから提供されずに、いきなりそれよりはるか下の価格がはじめて示現しました。
結果的に強制ロスカットは全く機能せず、個人投資家が独自に入れていたストップロスが値飛びの前に設定されていた部分だけ予定通り履行されることとなってしまったのです。
この事態では当然、投入資金をはるかに超える損失が発生し、業者は利用者に追証を求める形となって、多くは裁判にまで持ち込まれましたが、もともとの約款でもこのリスクは謳われていたことから利用者が敗訴して支払いに応じざるを得ない事態に追い込まれています。
追証といいますと、日々の取引の中で発生する比較的緩やかな証拠金不足をイメージしますが、実は暴落が起きたときがもっとも深刻で大きな追証を求められることが多くなるのです。
なのでスイスショックに限らず、9.11やサブプライムローン問題、リーマンショック、ギリシャショックや東日本大震災のような社会全体を巻き込むような大恐慌や大災害が起こった場合、国内FX業者のトレーダーは莫大な借金を抱えてしまう可能性が常にあるのです。
・追証=マイナス分は借金扱い
通常追証は証拠金維持率、つまり口座残高が極端に低くなった場合にそのポジションを維持するために証券会社から請求されます。
これはいわゆるマージンコールという形で行われます。
マージンコールがかかった場合は、追加証拠金をFX口座に入金しなければなりません。
もちろん証拠金維持率によって入金額も変わってきます。
そしてたとえその証拠金が維持できなくなってしまったとしても、普通は強制ロスカット実施などがあるので、そこでFX業者によって強制決済されてしまいます。
なのでレバレッジをたくさん効かせたトレード手法をしたとして、損害が大きくなったとしても借金を背負うことはありません。
しかしリーマンショックなどの為替市場の急激な変化に対して、そのFX会社の約定スピードを超えてFX業者の強制ロスカットや売り注文も取引システムも間に合わない場合、マイナス残高となり、その口座残高マイナス分はロスカット未収金として顧客に請求されてしまいます。
一般的にはFXでは大損害をしても投資金を超えて資産がマイナスになってしまうことはないと思われがちですが、実はとんでもない仕組みで、いつ多額の借金が降ってわいてくるかは全くわからないものであることがよく理解できます。
・FXでの負債は自己破産不可
さらに厄介なことに日本の法律で、FX取引で発生した借金については自己破産の免責不許可事由により自己破産は基本的にはできません。
なのでFX口座を作って、マイナス口座となってしまい背負ってしまった借金で本当に苦しんでいる人がいるのも事実です。
追証分は証券会社との話し合いによって決められるといいますが、返済しない場合財産差し押さえなどの法的な手段にでられます。
もちろんその場合も弁護士に相談するなどして自己破産が認められる場合もありますが、こうなってしまっては後がただ辛いだけなので、このようなリスクはできるだけ避けるべきでしょう。
(※海外FXのトラブルは弁護士に相談してもあまり意味がない⇒)
・スイスフランショックでの海外FX業者の対応例
上述のスイスフランショックでは、ユーロスイス為替相場は一時41%ほどの大暴落が起き、国内FX利用者は追証が発生して大変な事態に巻き込まれましたが、一方でほとんどの海外FX業者は、公言している通りのゼロカットシステムにより、利用者に追証を求めることはありませんでした。
例えば、海外FXブローカーの中で圧倒的ユーザー数と人気を誇るXMやFxPro、AXIORY 、ランドFX、タイタンFX、といった主要海外FX業者はすべて、前々から公表していたようにゼロカットシステムを採用しているので、約束通りゼロカットを適応しマイナス分になったものをすべて0にリセットし、トレーダー側に追加の追証請求が行くことはなかったのです。
これは会社の利益よりもトレーダーの利益を尊重した素晴らしい行動、対応であったと言えます。
ちなみに、ゼロカットシステムを採用していたアルパリという海外FX業者は、この仕組みを導入したことで、顧客に損失を請求できず破綻に追い込まれる事態となりました。
しかし、アルパリの顧客はまったく無傷で済んだので、これが本来FXブローカーとしてあるべき姿と言えるでしょう。
このゼロカットシステムはオーストラリア系の業者では導入されなかったところもありますが、最近ではオーストラリアの業者は日本人トレーダーの利用はできなくなっていますので、ほとんどの主要な海外業者はこの仕組みを適用している状況です。
・国内FX業者にゼロカットシステムがない理由
ちなみに、日本国内の業者でゼロカットシステムを採用している業者は本当にないのか?と疑問に思って徹底的に調べましたが、今のところ皆無でした。
国内のFX業者がゼロカットシステムを採用できない理由としては、金融庁から顧客の損失を業者が補填してはならないという厳しいお達しがあるからで、過去に本邦系の証券業者が損失補填を行って大問題になったことなどが影響をしているようです。
今後レバレッジ10倍規制が店頭業者に実施されたあと国内にもゼロカットシステムを導入するといった話がでていますが、どうなるかは今後の金融庁の判断次第ということになりそうです。
■ゼロカットシステムを利用した両建てトレード
ゼロカットシステムを導入している業者2社を利用して、ゼロカットシステムを利用した売買というのも理論上は可能になります。
たとえば1000倍のレバレッジを提供する業者2社をあらかじめ用意し、米国の雇用統計などの経済指標が発表されるときに、双方に5000円の証拠金を投入して完全に反対売買を設定した場合、ドル円が1ドル110円ならば1000倍のレバレッジなら1万通貨は1100円で購入できますから売りも買いも購入しておけばコストは1100円で残金は3900円になります、
したがって二つのポジションをもっていればどちらかに利益がでてどちらかに損失がでることになりますが、1万通貨ですと39銭相場がうごいてしまうと含み損を抱えたほうのポジションはゼロカットで自動的に終了することになりますが、どちらも50銭といった指値をしておけば、生き残ったほうのポジションは5000円分の利益を確保できることから物理的にはこうした両建てを利用することで1100円程度の利益がでることが想定されます。
これは同じ業者内で両建てをしても何も利益にはなりませんので注意が必要ですし、同一業者内の異なる口座でこうしたことをすると取引停止に追い込まれますので注意が必要になります。
ただし、スプレッドが異常に開いてしまいますと損失を食らったほうのポジションはゼロカットでなくなりますが、生き残ったほうのポジションうまく指値で利益確定できないといった特別な事態に追い込まれますので、相当慎重な取引が必要になるのは言うまでもありません。
仮に5000円の証拠金を、5万円に上げて同じことをすれば1万1000円がなんの努力もしないで転がり込んでくることになりますが、相場が直前に上下してしまい、上も下もゼロカットのストップロスをつけてしまうなどという悲惨な事態に追い込まれることも十分にありえます。
理論的には可能な話ではありますが、あまり積極的にはお勧めできない取引手法といえます。
■結論→ゼロカットシステムはトレーダーの安心の盾
多くの国内企業が追証を導入する中、反対に多くの海外FXがゼロカットシステムを採用しています。
金融庁は海外業者が闇雲に危ない存在と指摘しますが、じつは取引上顧客を守るしくみとなるゼロカットシステムははるかに国内の店頭FX業者が提供する取引条件よりも顧客保護が進んでいる点は見逃すことのできないポイントといえます。
ハイレバレッジやボーナスといったインセンティブ以外にも、このゼロカットシステムを利用することができるだけでも、海外FX業者を利用してトレードする意味合いがあることをしっかり認識しておきたいものです。
もちろん海外FX業者の利用の際には、その業者が海外の金融ライセンスを取得していて詐欺業者でないかどうかなども、しっかりチェックしておきましょう。