海外FX業者を利用すると、真っ先に気づくのがスプレッドの広さということになります。
とくに国内の狭い業者を利用していて、スキャルピングなどに精通されているトレーダーの方は、海外業者で売買した途端に一定の幅を動かないと約定できないので、かなりやりにくさを感じることが多いです。
このスプレッド、なぜ海外の業者は一様に幅広い設定になっているの?
また、スプレッド原則固定という設定をする海外FX業者が、なぜ少ないのか?
もくじ
■海外業者にはスプレッド以外に利益創出機会がないのが大きな理由
海外のFX業者は国内の店頭FX業者と比べて、ビジネスモデルがかなり簡略化されています。
手間をかける部分と、自動化して手を出さない部分が大きく異なっています。
まずNDD方式のビジネスプロセスを選択している業者は、とにかく顧客をたくさん集めて頻繁に取引してもらい、そのボリュームが最大になることに重点を置いています。
NDD方式の業者は顧客を増やしたいので、口座開設時にボーナスを付与してくれたり、入金時にボーナスをつけて、取引ボリュームが上乗せできるようにプロモーションを仕組んでいます。
NDD方式の売買は、STPと呼ばれるものと、ECNで電磁的に行うものがありますが、どちらも業者がそこに上乗せするマージンだけが利益になっています。
STP方式は、スプレッドにそのマージンが含まれる状態。
ECN方式は、マージンは外だしになる状態です。
少人数で大きなロットのビジネスを回すために、このカバー先を設定して最適化をはかる作業はすべてITが実現してくれますから、人間が絡んで利益を確保する機会はなく、とにもかくにもこのスプレッドのマージン部分だけが海外FX業者の利益なのです。
したがって会社を黒字に成立させるために、どうしても海外FXのスプレッドは幅広いものになりがちといえます。
■国内業者はDD方式の名のもとに実に様々な利益を創出
一方国内業者は、ディーリングデスクを社内に設置して、実に様々な利益創出行為を行っています。
まず、同じ通貨ペアの取引を行っている買いと売りの顧客注文は相殺します。
その上で、はみ出た部分を業者自ら反対売買するか、カバー先に出すか、そのまま放置して呑みにするかを常に判断しているのです。
まず顧客のポジションに利益が乗っている場合には、反対売買をしても損失が増えるだけですから、カバー先に単純につけて同じように利益を稼ぐ形をとります。
逆に損失が出ている場合には、反対売買を行うことで、顧客と利益相反になる形で利益を確保することになります。
反対売買をすることで利益をとれますが、そのまま呑みにして放置しておいて、強制ロスカットになるようにしておいても、顧客の証拠金の損失部分はそのまま利益としていただくことができるので、顧客損失は業者にとってはまたとない利益機会でもあるのです。
とくに呑みで、そのまま顧客の損失が拡大するのを待っている場合には、反対売買もしませんから、そもそも業者側にはなんの取引コストもかからず、顧客の損失がまるまる利益になる点がNDDを利用する海外業者と大きく異なるところです。
さらに原則固定で、業界最狭スプレッドを謳っている業者でも実際には故意に約定を遅らせるなどして、スリップを出すことで通常のスプレッドよりも拡大して利益を獲得しているケースがあるのです。
そもそも、すべてカバー先にオーダーを出しているわけではないのですから、そんなに滑るとか約定しないということが頻繁に出る筈がないのですが、国内業者はこれを故意にやっているのではないかという噂は後を絶ちません。
特定通貨ペアについて、
「売るか買うか」
「リカクか損切り」
この2パターンしかない取引であるわけですが、国内業者というのはここまで綿密なオペレーションをして利益を創出しているのです。
国内FXのスプレッドは狭く見えますが、それ以外の部分でコストを上乗せして個人トレーダーに負担させているのです。
■海外FX業者のボーナスコストはスプレッドから捻出
海外FX業者が、取引に付与してくれるボーナスなどのコストも、実はスプレッドから捻出されています。
クレジットという形で証拠金にプラスするボーナスは、それを使って顧客に売買をしてもらい、顧客の利益が出れば、業者にとっては取引ボリュームが増えるわけですから、同じく利益に繋がります。
しかし、損失が出てロスカットになった場合、顧客が投入した証拠金と同様に損失の引き当てに使われてしまいますから、もともとなかった証拠金の損失をさらに増やす材料になってしまうわけです。
すべての証拠金がそのような損金にはなりませんが、ゼロカットシステムを導入している業者の場合は、一定の割合が業者負担になっていることから、STPのスプレッドを幅広くせざるを得ない材料になっているといえます。
ECN方式の場合には、そうした調整ができませんから、逆にECN口座にはボーナスを付与しない業者もあるぐらいです。
■NDD方式のカバー先数とスプレッドは必ずしも関係ない
よくNDD方式のカバー先の数が多い業者は、スプレッドが狭くなるといった解説をしているサイトがありますが、これも推測の域を出ず、業者ごとに損益分岐点をどこに置くか次第の話で、必ずしも顧客に還元されていない状況が見受けられます。
例として、
30社近いカバー先を設定すれば、買いと売りのドル円価格が、両方ともに110円のオファーが出ることもあります。
カバー先を利用しても、業者は一銭もスプレッド分のコストを支払わずに売買をすることができるのです。
カバー先のインターバンクをどこと契約するかも重要で、FX市場でもっとも取引の多いユーロドルやドル円などは、その領域の売買に得意なカバー先を設定るすることで、非常に狭いスプレッドを実現することもできるのです。
また逆に買いのコストが110円で、売りのコストが109,99円になって、マイナスになるケースがあります。
こうした瞬間的な売りオファーと、買いオファーのどれを選択するかは、アルゴリズムが1000分の1秒単位で判断してマッチングしていますから、カバー先が多岐にわたっている業者ほど、売買条件は良くなる可能性があります。
また取引き通貨のボリュームに合わせて、カバー先業者をうまく選定すれば、NDD法式でもかなり利益を確保することが可能になります。
ただ、こうした企業努力は、業者にとっての利益確保の最適化であって、それがうまくいっているからという理由で、顧客の応分の利益でスプレッドを狭くして供給しているかというと、どうもそういう形の利益還元をしていないように見えます。
要するにカバー先を増やしてNDD法式を実施しているところは、自社の利益取り分を増やすために必死になっているだけで、顧客にそれを分配するかどうかはあくまで企業姿勢と関係しているといえそうです。
ただ、そうは言っても取引条件は顧客獲得に重要な要件ですから、業者ごとに取引ボリュームの多い通貨ペアごとに、一定の配慮がなされていることは感じられます。
たとえば、日本人個人投資家を意識している業者では、ドル円の平均スプレッドはある程度配慮されていますし、欧州の顧客を多く抱えている業者は、ユーロ関連やポンド関連のスプレッドに配慮しているように見えます。
逆に豪ドルやNZドルなどは、全くスプレッドを配慮しない広い設定になっており、このあたりは業者の考え方次第によるものであることがあらためて感じられます。
■平均スプレッドは名実ともに平均で取引時のスプレッドとは異なる
海外FX業者のSTPをベースとした口座では、平均スプレッドを開示していますが、これはあくまで全取引時間のスプレッドをならした平均値です。
一応の参考にはなりますが、それが通常取引するときのスプレッドになっていないことも理解しておく必要があります。
カバー先が多岐にわたっていて、その組み合わせを常にアルゴリズムが最適化するNDD方式の口座では、相場は常に変化し、その変化した金額にまた常に一定のマージンが織り込まれて平準化しているのが実情です。
普通に取引している場合、最小スプレッドなどにお目にかかることは殆どありません。
たとえば、私がよく取引をしているXMのドル円でいいますと、業者が開示している最小スプレッドは1銭ですが、東京タイムのよほどの凪相場のときに数十秒でることはあっても、相場が動き出すとだいたい2銭程度を示現することが多く、業者が開示している平均1.9銭で取引できるのさえ限定された時間になります。
もちろん凸凹はあるものの、平均スプレッドに近い数字は結構でるものだと思っていいかと思います。
ただ、東京タイムのドル円が比較的平均に近いスプレッド時に、ユーロドルはそれほどでもないといった、時間帯別に調子のいい通貨ペアと、そうでない通貨ペアがあることも忘れてはならない状況です。
以下の表は、海外FX各社の通貨ペアごとの平均スプレッドですが、こうして比較してみますと、どの業者がどの通貨ペアに力を入れているかがわかります。
また、スプレッドが比較的狭く設定されている業者は、ほとんどの通貨ペアでも狭いということも把握できます。
いまのところ業者ごとのスプレッド比較をするならば、この平均値で見てみるのがもっとも役に立つかと思います。
■ECNはSTPより狭いスプレッドだがマイナスを出すところは稀
ECNは、完全に電子的なマーケットに業者が集まって売買していますので、スプレッドはSTPよりも狭く推移します。
また海外業者のECN口座は、マージン自体が外だしですから、STPよりもかなり取引しやすくなるといえます。
たた、そのマージンもそれなりの設定になっていますから、やはり応分の負担を強いられることは間違いありません。
取引きマージンだけが利益になっている海外FX業者は、ビジネスモデルの実情を正確に公表していることになるので、国内業者よりも透明性が高い存在であることが理解できます。
またECNのマーケットでは、ゼロやマイナスといったスプレッドは出ないのが特徴で、国内のNDD方式を提供する業者に比べますと、いまひとつ魅力が薄いともいえる存在です。
■スプレッド原則固定という海外業者の存在には注意
海外業者の中でも、もっともその取引きの中身がはっきりしないのが、原則固定を謳う業者です。
NDD方式であることも開示しておらず、だからといって国内業者のように社内にディーリングデスクをもって取引していることも公表しないままに、原則固定スプレッドを売り物にしている海外FX業者はかなり不思議な存在といえます。
そもそも海外業者は、国内業者が行っているようなDD方式で、きめ細かく顧客の売買と反対売買を成立させて利益を確保するといった芸当ができるところはほとんどありませんから、原則固定スプレッドを打ち出している段階で、かなりの違和感を感じることになります。
断定はできませんが、早い話しがすべて呑み行為だけ行っているのではないかと疑いたくなるような存在です。
取引きにあたっては、相当な注意が必要になるのは言うまでもありません。
呑み専門業者の場合、顧客の損失がそのまま利益になるので、新しく口座開設して取引し、負けて撤退してくれるのがもっともいい顧客となります。
逆に利益をコンスタントにあげて出金しようとする顧客は、嫌な顧客になるわけですから、出金拒否といった異常な事態を巻き起こすことになるのです。
スプレッドから業者を見ると、実にいろいろなことがわかるのが理解できます。
■まとめとして
国内の店頭FX業者が人工的に作り出した、0.3銭とか0.5PIPSといった狭いスプレッドに慣れてしまいますと、海外業者のスプレッド幅は広くて、暴利をむさぼられているような気がしてきますが、彼らの利益はまさにこの部分のマージンだけですから、かなり正直な利益を開示しているともいえるのです。
表面的には狭いスプレッドに見えながらも、じつはそれ以外の部分で顧客がコスト負担を強いられている国内業者に比べれば、かなり正直に実情を開示しているともいえるのです。
一般的にすべての取引について、平均して2銭もしくは2PIPS程度のマージンがないとやっていけないのが海外業者の実態であると思うと、彼らのオファーしてくる価格にも納得がいくことになりそうです。