海外FX業者にはNDD取引の形態の中に、さらにSTP取引きというものが存在します。
STPとはストレートスループロセッシングの略号で、FXの世界だけで使われる言葉ではなく業務プロセスの自動化などにも利用される言葉となっています。
これはFX業者の社内に、ディーリングデスク(DD方式)といった顧客と反対売買をするような部門をおかずに売買する自動化の仕組みのひとつが、STP方式となっています。
今回はこのSTP取引きについてご紹介していくことにいたします。
もくじ
■STP方式とは?ECNとの違い
STP方式とは、顧客からの注文のほぼすべてをカバー先の金融機関に投げて最も取引条件のいいものをアルゴリズムで組合せ、それに業者のマージンを上乗せした売買方式となります。
ほぼすべてと書いたのは、実は同一通貨ペアにおける顧客同士の反対売買は相殺しているからで、それ以外の注文はすべてカバー先と呼ばれるインターバンクなど最大数十社との取引きの中から選択する形となります。
実は社内にディーリングデスクをおかないNDD方式を選択する業者の中にはECNと呼ばれる電子的市場決済の仕組みもその多く並行採用していますが、STP方式は海外業者の最も主要な取引形態ということができます。
ちなみにECN方式は、Electric Communications Networkの略号で、その名のとおり電子商取引を利用して顧客からの注文をすべて電子商取引所に流してマッチングさせるため業者は一切手を触れることなく最適化が行われることから狭いスプレッドが実現できるのです。
その代わり業者は、常に一定の取引手数料を加算して請求してきます。
■STP口座のメリット
顧客にとってのSTP口座のメリットは、まず業者が利益相反する反対売買を一切行わないことから安心して取引きすることができるという点が挙げられます。
またカバー先を多数持っていますので約定力は非常に高く、故意に制約しないといった業者による調整が起こらない点も大きなメリットといえます。
国内業者の原則固定スプレッドというのは業者により人工的に作り出された取引条件で、ある程度はカバー先に金融機関を利用していますが、ディーリングデスクで反対売買を行っているケースも多くなります。
こうなると投資家の利益は業者の損失になりますから、わざと約定しないようにしたりスリップさせてスプレッドを故意に広げたりという利用者にとってマイナスになるような行為が出る可能性があるのです。
OTC方式(DD方式)と呼ばれる、いわゆるディーリングセスクを社内に置いて業者が反対売買を行うやりかたは、顧客と明らかに利益相反になるわけですから好ましくないのは明白です。
しかしSTPは、顧客同士の通貨ペア取引の反対対売を相殺する仕組みはもっていますが、それ以外はすべてカバー先の業者に出して取引をし、業者はそれにマージンを上乗せするだけですから、顧客の利益相反は一切起こらない取引モデルといえます。
したがってSTPなら、少なくとも業者が顧客に不利になるような価格提示やスリップを故意に起こすといった心配はない点が、非常に大きな利点ということができます。
また取引き手数料はすべてこのスプレッドの中に入っていますから、それ以上のコストはかからないのも判りやすい仕組みといえます。
■STP口座のデメリット
ただ、このSTP方式の場合、スプレッドはほぼ一定の水準に保たれてしまいますので、多少はスプレッドが狭くなった部分が還元されますが、本来カバー業者の組合せでゼロやマイナスなどのスプレッドがでても、すべてFX業者の利益に吸い取られてしまう点はかなり残念なところです。
また全般的にスプレッドが広いことから、スキャルピング専門に売買するトレーダーにとっては利益が出にくいというデメリットがあることも事実です。
■STP口座が向いているトレーダー
海外FX業者のほとんどの一般的な取引はSTP方式ですから、特段この口座が向いているユーザーというのを規定するのは難しくなりますが、一つ言えるのは国内で原則固定の取引を長年してきたトレーダーには若干スプレッドが広くなるものの、ある意味で使いやすい仕組みということができます。
とくに、くりっく365で幅広いスプレッドなどに慣れているトレーダーにとってはこうしたSTP方式のスプレッドでも結構狭く手使いやすいという印象を与えます。
■STPが有利なケース
FX取引そのものだけにフォーカスした場合にはSTP方式よりもよりプロアクティブで電子商取引により売買するECNのほうが利用者が負担するコストは結果的にSTPよりも安くなります。
ただ、ECN方式の口座にはFX業者にはつきもののインセンティブとなっているボーナスが支給されないなどのデメリットもあり、自前の証拠金よりもボーナスで多く確保したいと考えるならSTP方式を選ぶほうが有利なケースがあります。
たとえば、国内個人投資家には人気のXMではSTP方式の口座であるスタンダード、マイクロ口座にはボーナスが支給されますがECNのゼロ口座には何も支給されないという違いが設定されています。
証拠金を大きく増やして利用したいならばSTP方式の口座を利用したほうがお得ともいえるわけです。
■ECN/STP比較表
主要な海外FX業者におけるSTPとECNサイトを比較してみますと次のような表になります。
当然のことながらSTPサイトはスプレッドがどの通貨ペアでも総じて広くなりますが、ECNはマージンが外だしのところが殆どのためスプレッド自体は
平均値で比較してもかなり狭くなることがわかります。
その代わり10万通貨に対して以下のような取引き手数料が必要です。
「STP口座」と「ECN口座」の違いをおさらい
STP口座はNDD方式と呼ばれる業者内に、ディーリングデスクを設置しない売買方法の中で、ももっともポピュラーなもので業者の手数料はすべて内在する形になっています。
比較的安定的な約定力を提供するのが特徴です。
一方ECNは、完全に外部の電子商取引所に取り次いで売買しますのでスプレッドは参加業者が提供する条件の中で、もっとも最適なものを常に提供してくれるいうことから安いコストで売買ができるのが魅力となります。
「STP口座」or「ECN口座」どっちがおすすめか?
国内で厳しい競合環境から、驚くほど狭いスプレッドを提供してきた店頭FX業者の取引条件に慣れてしまっていますと、STPもECNも結構スプレッドの広い取引きに見えてしまいますが、海外業者でもスキャルピングを主体の売買をしたいと思うのならばECN口座がお勧めになります。
そこまで厳しい条件を突き詰めるよりも、ハイレバレッジでの取引自体を重視するということならばSTP口座で十分といえます。
とくにボーナスがつく業者の場合には、むしろSTP口座を利用したほうたトータルでお得であるともいえますので、自分の取引スタイルに合わせて選択することがお勧めとなります。
■結論
STP方式は国内業者にはほとんど存在しないカバー先の業者にほぼすべてのオーダーを出して確実に約定できるようにした仕組みで、業者と利用トレーダーの間に利益相反が一切起こらないという点では利用者にも十分にメリットのある売買方式といえます。
ただ、一定のマージンが織り込まれていることから決してスプレッドはどの通貨ペアでも狭いとは言えない状況で、スキャルピングなどのためにより優遇された取引条件を求めるのならばECN口座を開設してみることがお勧めになります。
こうしたSTP・ECNの口座は両方解説できる海外業者がほとんどですから、どうしても迷ったら両方開設して使い比べてみるのがもっとも確かな比較方法になることでしょう。