国内の店頭FX業者のレバレッジ10倍規制が現実のものになろうとしている中で、急に関心が高まっているのが取引所FXのくりっく365です。
国内のFX取引は年間で実に5000兆円を超える規模にまで成長していますが、その99%は店頭FX業者の提供する相対取引によるもので、取引所FX取引は今やたった1%程度のシェアしかないのが実情です。
このくりっく365がなぜ今ごろ注目されるのかについて今回はまとめてみたいと思います。
もくじ
■くりっく365と店頭FXの違いとは
くりっく365は、東京金融取引所が2005年に市場を開設し運営している、外国為替証拠金取引の愛称のことを言います。
国内のFX業界は2000年代に入ってからネットビジネスということもあり異業種からの参入が相次ぎましたが、粗悪な業者も多く足元における仮想通貨取引所を彷彿とさせるような劣悪な状況が展開されていました。
それまでは取引を規制する法律も監督官庁も明確になっていませんでしたが、金取法が改正されて金融庁により厳密な監督体制が実施されるようになってから様々な規制が発動され業界の粛清が進むこととなりました。
その途上で、より透明性の高いビジネスモデルを提供するために金融取が開始したのが、このくりっく365という取引の仕組みなのです。
くりっく365の大きな特徴
クリック365の最大の特徴は取引所取引であるということです。
株は東京証券取引所で取引しますがそれと同じで為替専門の取引所による取引がこのくりっく365の最大の特徴といえます。
店頭FX業者を利用した取引は同じFX取引であっても個人投資家と業者との間で相対契約を結び、いわば業者が提供する取引条件で売買をすることが必須となる取引モデルですが、クリック365は加盟各社のどこで口座開設をして売買をしても取引所が提示する共通価格で売買ができることも大きな特徴と言えます。
メリット
クリック365ではあらかじめ設定されているマーケットメーカーと呼ばれる6社が提示する売買価格の中から最適なものを取引所が合成しますので、もっと投資家に有利な価格が提示されることになります。
しかもその価格は取引可能数量も提示されていますので、その中であれば確実に約定し、スリップも起こらない点が非常に秀逸な仕組みといえます。
またスワップポイントは買っても売っても同じ価格に設定されていますから、相対契約で理不尽な設定による付与や支払に巻き込まれずに済むというメリットもあります。
くりっく365発足当初は多くの業者が取引手数料を徴収していましたが、今ではほとんどの業者が手数料無料としている点も利用し易いものになっているといえます。
大手業者にはないようなマイナー通貨ペアも設定されており、スワップ狙いの取引きに利用し易いのもメリットの一つといえます。
くりっく365発足当初は申告分離課税などや損失の繰り越しなどの税制上のメリットが付与されていましたが、足元では店頭業者にも同様の税制が適用されるようになり固有のインセンティブにはならなくなっています。
デメリット
くりっく365のデメリットとしての決定的なものは、スプレッドの取引条件が極めて悪いということです。
店頭FX業者が提供する原則固定の最狭スプレッドと比較しますと、くりっく365はもはや競争にならないぐらい幅広い設定になっています。
さすがにこれではスキャルピングのような取引には向きませんし、かなりスプレッドの取引条件の悪い海外FX業者と比較しても非常に劣悪な条件となっていることは間違いありません。
実はこれには、手数料無料化が裏に絡んでいることがわかります。
2013年から多くのくりっく365業者手数料無料化を実施していますが、これは取引所が1枚について108円を上限とする取引振興料を支払う代わりにマーケットメーカーの手数料を同一金額の1枚108円に引き上げたことから
そもそもマーケットメーカーが提示する価格に、すべて2銭ほどのコストが上乗せされているのです。
つまり平たく言えば、外だしの手数料をスプレッドの中に埋め込んで見えなくしただけなので、異常に幅広いスプレッド提供が実現したというわけです。
これは店頭FX業者の提示する条件と比較した場合、とてつもなく劣悪であり、しかもユーザーを胡麻化した仕組みになっていますから、利用者が増加するわけもない状況に陥っているのです。
年間取引額ベースでくりっく365が、全体のたった1%程度しか扱うことができない決定的理由はここにあります。
レバレッジ
くりっく365における現状の個人投資家向けレバレッジは、店頭業者と変わらず25倍となっています。
ただこれが今年中に店頭FX業者のみ10倍に規制されそうな見込みであることから、国内では唯一25倍のレバを提供するチャネルとなる可能性が高まっているのです。
なぜくりっく365だけが規制から除外されるのかについての明確な理由はまったくわかりませんが、これが現実のものとなった場合には相当不公平な規制施行となることは間違いありません。
取引通貨ペア
くりっく365では、上記の表のように25種類の通貨ペアが用意されています。
そもそもスキャルピングには向かないことを自覚しているのか、頻繁に売り買いするよりは長期にスワップポイントのとれるような新興国通貨の上場が多いのが一つの特徴となっており、取引は主要通貨で1万通貨ペアから、マイナー通貨は10万通貨ペアからのとなっています。
したがって過少資金では取引しにくいのがネガティブな意味での大きな特徴といえます。
■取引開始までの流れ
くりっく365で取引するためには、参加業者にまず口座開設をすることが必要となります。
申し込みはほとんどの業者でネットから可能で、本人確認書類を送付すればすぐに取引が可能となります。
取引きはパソコンとともに、スマホなどのモバイル機器からの取引も専用ソフトが用意されていますので可能となります。
くりっく365 取引き可能時間
くりっく365は取引時間も独特です。
実際の取引時間は以下のようになります。
期間 | 曜日 | 対円通貨取引 |
米国標準時間 | 月 | 午前7:10〜翌午前6:55 |
火〜木 | 午前7:55〜翌午前6:55 | |
金 | 午前7:55〜翌午前6:00 | |
米国夏時間 | 月 | 午前7:10〜翌午前5:55 |
月曜日の朝7時10分からの取引は致し方ないとしても毎日朝1時間取引が停止するのはかなり不便で、とくにこの時間帯に政策決定が発表されるNZドルの取引にはまったく向かないことがわかります。
取引コースと手数料
くりっく365の取引には既存のくりっく365取引きとともに、くりっく365ラージ取引が存在します。
ただラージのほうは5通貨のみの設定で、果たしてこうしたニーズがあるのかどうかかなりクビをかしげる状況で、取引手数料はもちろん有料となります。
くりっく365 iサイクル注文とは
くりっく365iサイクル注文とは、外為オンラインが店頭FXで導入している仕組みを、くりっく365にもキャリーオーバーして提供しているものです。
これはいわゆるリピートイフダン型の仕組み売買でシストレではありませんが、一定の値幅に対して繰り返し売買をしては利益をとるという優れた仕組みです。
店頭FXでも人気のサービスですが、問題は果たしてこのスプレッドの広いくりっく365のプラットフォーム上で、店頭FX同様の利益が収められるのかどうかという点になります。
この仕組みは一定の売買手数料がスプレッドに投資助言料として加わりますから、もともと高いスプレッドコストでペイするのかどうかが気になるところです。
ほとんどサービスに変化のないくりっく365業者の中では、それでももっとも有効なサービスを提供する業者として注目することはできそうです。
■くりっく365を比較
現状では、くりっく365を扱う業者は16社ほど存在します。
半数以上が証券会社となりますが、FX専業の店頭業者も扱っていることがわかります。
足元ではほとんどの業者が手数料無料を打ち出していますが、引き続き徴取する業者もありますので慎重な選択が求められることになります。
おすすめ業者
くりっく365の業者選択にあたっては、株の取引きと並行して行うので利用頻度の高い証券会社でこの商品を扱っているところを選ぶといった方も多いようですが、純然たるFX取引という視点でいいますと、オススメは外為オンラインということになりそうです。
取引きに関しては、この16社ほぼ横並び状態ですが、iサイクル注文が可能な外為オンラインが最も秀逸な存在といえます。
最大取引枚数
くりっく365では最大一度に500枚まで売買が可能となっており、さすがに取引所だけあって売買枚数にかなり余裕のある取引が可能になりそうです。
大量取引を行う場合には、くりっく365ラージを利用すれば主要な5通貨ペアでの売買が確保されることになります。
最低証拠金
くりっく365は1万通貨ですから、取引する通貨ペアにあわせて証拠金が必要になります。
たとえばドル円1万通貨であれば、1ドル110円ならば44000円が証拠金として必要になりますので、少なくとも10万円以上の資金を用意することが必須となります。
各業者ごとに最低入金額は決まっていますが、ロスカットに合わないためにも一定以上の金額投入が必要であり、1000通貨単位で取引ができる店頭FX業者よりも潤沢に資金を用意している必要があることは間違いありません。
1万通貨ペアで複数のポジションを持とうと思うのならば、最低でも50万円程度の証拠金が欲しいところで、残念ながら少額での投資には向かない口座となってしまっています。
まとめとして
店頭FX業者のレバレッジ10倍規制の話が顕在化してから、突如として話題に上るようになったのが、くりっく365です。
確かに黎明期には、国内FX業界に与えた標準化の影響は大きかったものの、店頭FX業者のほうが主流となり、厳しい競争環境の中で取引コストが大きく下がり、しかも取引ツール等のサービスレベルが格段に上昇している状況下ではくりっく365、くりっく365ラージともに商品価値が著しく低下しており、安心感や約定力といったところを評価しないかぎり、普通の個人投資家が、くりっく365を積極的に利用する理由はほとんど見つからないのが現状です。
取引所で最適な価格が提示される仕組みも、店頭FX業者ではさらに多くのカバー先を利用したECNといったNDD方式の売買も始まっているだけに特段目新しさもない状況といえます。
しかしながら国内で25倍のレバレッジを提供するのが、この商品に参加する16社のみということになりますと、有利な条件を確保するために、こうした業者に口座開設をしなくてはならないという状況に追い込まれることもありそうですので、今のうちからよく理解しておくことはプラスになりそうです。
正直なところ参加業者の顔ぶれは店頭FX業者とはかなり異なりますので、果たしてレバ10倍規制が正式決定した際にこうした業者に顧客が本当に流れることになるのかどうかにも注目していきたいところです。
https://mokuzai-points.jp/2018/05/13/fx%E3%83%AC%E3%83%90%E3%83%AC%E3%83%83%E3%82%B8%E8%A6%8F%E5%88%B6%E5%BE%8C%E3%82%82%E7%A8%BC%E3%81%92%E3%82%8B%E3%83%88%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%BC%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8B%E3%81%9F%E3%82%81/