国内ではここ数年シストレなどと呼ばれた自動売買から、いわゆる仕組み売買のようなサービスに非常に人気が集まり、個人トレーダーが多く利用するようになっています。
この理由を見てみますと、個人投資家が今なにを業者に求めているのかが非常によくわかります。
もくじ
■シストレの衰退がリピートイフダン型仕組み取引を普及させた
2010年ごろアルゴリズム取引が隆盛となって時期には多くの個人投資家が裁量取引に限界を感じはじめ、いわゆるシストレが人気になっていった時期がありました。
この流れは二つで、
・MT4を利用してEAを導入することで自動売買を行うというもの
・イスラエルのトレーデンシー社が開発したプラットフォームを利用してFX業者のサーバー上で自動売買を選択していくミラートレーダー
というものの、二方向が注目されることとなったのです。
海外ではMT4と呼ばれるロシアのソフトウエア会社が開発したシェアウエアが非常に広く普及するようになり、それに伴ってEA(エキスパートアドバイザー)と呼ばれストラテジーソフトをインストールしてシストレを行うというものが非常にはやりました。
日本でもYJ!FXやマネックス証券などがいち早くこのプラットフォームの導入を決めましたが、実はシストレに利用するのには二つの障害があり、結果的に普及は進まない状況になりました。
その二つの理由とは、自宅のパソコンのようにいつ停止するかわからないものではなく、ノンストップを実現できる外部サーバーにMT4をインストールして自己管理しながら稼働させないと安定した取引ができないことがひとつで、もうひとつは金融庁が有償のEAの販売は投資顧問業の有資格企業者以外販売は違法であるということを打ち出したためでした。
このことから、先行導入したマネックスもYJ!FXも早々にその利用を諦めることとなり、今では国内のFX業者ではFXTFが継続してMT4を使い続ける程度で非常に下火になっているのが実情です。
第三者が作ったシストレの戦略というのはとかくブラックボックス化しがちで、どんな相場状況のときに大きく損が発生するのかがいまひとつわからないものであったことも利用者の共感を得られないものとなったようで、このEAによる売買は一定のロジックで構成されているだけでAIによるアルゴリズムの自動売買とは遠くかけはなれた存在であったことも、先行利用したユーザーから飽きれるものとなってしまいました。
■ミラートレーダーも結局ほとんどの業者が撤退
MT4と同時期に人気になったミラートレーダーは、MT4と違って業者のサーバー上でストラテジーを選択して稼働させればパソコンを閉じていても勝手に稼働してくれるという気軽さがあり、一時は国内店頭FX業者6社ほどがこのサービスを提供していました。
しかし足元ではインヴァスト証券とセントラル短資以外は、すべて撤退しており、ほとんど下火の状況です。
こちらの自動売買も第三者が作ったストラテジーということで、前週まで絶好調の利益獲得をしていたものでも流れが変わると異常に大きなドローダウンを示現するなど、いまひとつストラテジーの中でどうロジックが動いているのかわからないということに非常に利用者の不満が募ったようです。
要するに、シストレに期待した顧客のレベルと結果に乖離がありすぎたのが、人気を急激に下げる原因になったものと思われます。
■それに代わって人気を博したのがトラリピに代表される仕組み売買
国内FX市場では、2007年にマネースクエアジャパン(M2J)がいち早くスタートさせたイフダン機能を使って繰り返し売買を行う、トラップリピートイフダン、通称トラリピと呼ばれる仕組み取引のほうに人気が集まることとなり、ほぼシストレユーザーはこちらの仕組みのほうに移行することになってしまったようです。
現在ではかなり多くの業者がこうした仕組み売買のサービスを提供しており、選択肢も増えていることからますます人気が高まっている状況です。
このリピートイフダン型のしくみ売買の方式はきわめて簡潔で、かつ物理的な発想に基づく売買であり、相場が上にいくか下に行くかでポジションを設定し、その後利益がでればリカク、逆に損が膨らめば損失、というどのFX業者でも設定が出来るイフダンの機能をまさにリピートしてくりかえし、いくつもセットできるのが大きな特徴となっているのです。
シストレと違って機械がなにをどう設定しているのか初心者でも明確に理解できるところが大きな人気の秘密で、ある意味安心して使えるところも高く評価されています。
そんな中で先行してサービスを開始したM2Jのトラリピを真似する形で、それとよく似た仕組みのサービスが各社からでてくるようになったわけですが、M2Jは特許侵害であるとして業界大手でもある外為オンラインのサイクル注文を特許侵害であると訴え、2017年12月にこれが正式に裁判で認められM2J勝訴となったことから外為オンラインの同サービスは事実上利用ができなくなるといった事態に追い込まれています。
基本のイフダン機能には特許はないわけですが、それを繰り返すアルゴリズムの仕組みの部分がどうやら抵触するものとなったようです。
いまのところYJFXのリピトレ、アイネット証券のループイフダン、インヴァスト証券のトラッキングトレードなどは特許による差し止めの対象にはなっていませんが、この裁判が勝訴したことで競合他社は非常にこの手の仕組みの導入に気を遣わざるを得なくなっているといえます。
■海外業者のMT4でトラリピ的取引はできるか?
市場ではMT4の自動売買機能を利用して、無料でトラリピ的リピートイフダン売買を自動で行うことができるという情報がかなり出回っています。
名前もずばりトラリピEAなどという名称がついいるものがあり、同種のものは無償でも提供されていました。
しかし上述のM2Jの特許権裁判の勝訴により、この手の多くのプログラムがやなり特許権侵害の可能性があるという指摘を受けたようで、足元では有償販売も姿を消しているのが現状です。
したがって、ユーザーが自分でEAを作って売買する分には大きな問題にはならないと思いますが、いわゆる有償のEAを海外業者のMT4にインストールして使うというのはやはり問題がありそうな状況です。
■ハイレバレッジとEAは必ずしも親和性の高いものではない
MT4が使える海外の業者は、別にどうしても500倍以上のレバレッジを使わなくてももっと下げて自動売買に利用することは可能です。
しかし相変わらず24時間稼働するVPSを利用しなくてはならないですし、サーバーのトラブルは自己責任にになりますので、果たしてそこまでしてEAを動かすべきかどうかは相当お考えになってから実行に移されることをお勧めしたいと思います。
そもそも高いレバレッジを利用できることが海外FXのもっとも大きなメリットですから、そのレバレッジを下げて自動売買するということは親和性に乏しいともいえるのです。
■まとめ
EAを自作などすれば、国内でM2Jが提供しているトラップリピートイフダンに近い売買を自動で行うことは可能です。
ただし市場で無償や有償で販売されているトラリピEAなどという名称をつかったエキスパートアドバイザーは、ほとんど特許侵害に近い状況で姿を消そうとしています。
したがって今後利用しても、サポートが得られないなどの問題も起きますので、できれば海外のMT4で利用するのは見合わせたほうがいいのではないでしょうか。
どうしても使うのなら、独自にプログラミングをして自動売買プログラムを作成するか、M2Jで口座を開設して使うなり、競合社が提供してい類似のサービスを利用することのほうが安全です。